半導体の専門用語はアルファベット記号の略称で表される用語が多く、語感から意味を推測することも難しいものもあります。そのため、半導体市場を読み解くうえでの妨げとなっていることもあるのではないでしょうか。

中でも頻出するのが「半導体メモリ」の名称。半導体メモリにはいろいろと種類があり、容量、大きさ、処理速度、価格などそれぞれの特性により用途が異なります。

今回は、パソコンやスマートフォンのデータ処理能力を示すメモリとして使用されている「DRAM」、および「SRAM」について紹介します。

  • DRAM

    「DRAM」についてわかりやすく解説します

DRAMとは?

DRAMとは、パソコンやスマートフォンのほか、デジタル家電などにも広く利用されている半導体メモリの一種です。

DRAMは、通電時のみ記憶を保持できる「揮発性メモリ」であるため、通電されていないとデータが消えてしまいます。そのため、長期間データを記憶・保存するストレージとしての利用はできません。

  • DRAMとは

    DRAMはパソコンやスマートフォンなど、身近なデバイスに使われています

DRAMの意味やSRAMとの違いについて

DRAMは、「RAM」と呼ばれるメモリに、“動的”という意味の「Dynamic」がついた「Dynamic Random Access Memory(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)」の略で、「ディーラム」と読みます。

また、DRAMとは別に、“静的”を表す「Static」のSがついたSRAM(エスラム)というメモリもあります。

DRAMについての詳細を説明する前に、まずは「そもそもRAMとは」「DRAMとSRAMはどう違うのか」についてまとめます。

そもそも「RAM」とは?

RAMとは、任意のアドレスに記録されたデータに対し、直接アクセス可能なメモリです。メモリの中には、ほかにも「SAM(Sequencial Access Memory;シーケンシャル・アクセス・メモリ)」と呼ばれるものがありますが、こちらはRAMとは異なり、任意のデータめがけて直接アクセスすることはできません。

では、シーケンシャル・アクセスとランダム・アクセスの違いはどういったものなのか。VHSテープやカセットテープ、DVDやCDといったAV機器を例に説明しましょう。

昨今広く普及しているDVDやCDといった記憶媒体は、狙ったチャプターや曲に直接アクセスできますよね。これに対し、VHSやカセットテープでは、見たい箇所・聞きたい箇所にアクセスするために、いちいち「巻き戻し」「早送り」といった作業が必要でした。

前者のように、狙ったデータに直接アクセスできる技術を用いたメモリがRAM、反対に、後者のように狙ったデータに直接アクセスできないシーケンシャル・アクセスの技術を用いたメモリがSAMという訳です。

  • ソーケンシャルアクセスとランダムアクセス

    ソーケンシャル・アクセスとランダム・アクセスの違い

DRAMとSRAMの違い

では、DRAMとSRAMの違いはなんなのでしょうか。端的に説明すると、その違いは記憶の保持方法です。

まずDRAMは、記憶データを「コンデンサの電荷」として蓄えているため、情報を保持するためには、定期的に情報を読み出し、再度書き込む「リフレッシュ」という動作を実行する必要となります。リフレッシュの仕組みについては、後程説明致します。

一方のSRAMはというと、リフレッシュの動作は必要ありません。記憶部にフリップフロップ回路を用いており、そこでの電流の流れ方でデータを保持しているためです。

記憶を保持するために、変化が必要なく「静か」なメモリがSRAM、記憶を保持するために変化が必要な活「動的」なメモリがDRAMという訳です。原理については深く理解できなくても、SRAMのSが「Static(静的)」、DRAMのDが「Dynamic(動的)」であることを覚えておけば、両社の違いはイメージしやすいことでしょう。

DRAMの特徴

RAM、およびDRAMとSRAMの違いについての説明を終えたところで、話をDRAMに戻しましょう。

先に、DRAMは、データを保持するために電源を必要とする揮発性メモリに分類されると説明しました。反対に、電源不要の不揮発性メモリに「フラッシュメモリ」がありますが、DRAMのデータ処理能力は、フラッシュメモリよりも格段に速いのが特徴です。

合わせて読みたい:SDやUSB、SSDに使われている「フラッシュメモリ」って何?

DRAMは、コンデンサとトランジスタ1個ずつで構成された「DRAMセル」を複数組み合わせたものです。

  • コンデンサ(左)とキャパシタ(右)

    「DRAMセル」を構成するコンデンサ(左)とトランジスタ(右)

コンデンサとは、電荷(電気)を蓄えたり放出したりする電子部品ですね。DRAMは、コンデンサを用いて、電圧の高い状態を1、低い状態を0としてデータを記録します。トランジスタはこの際、コンデンサに電気を流すスイッチとして機能します。

コンデンサに蓄えられた電荷は、一定時間が経つと自然放電により失われてしまうので、これにより記録したデータも消失してしまいます。これが、DRAMの動作中、常にリフレッシュが必要な要因です。リフレッシュを何度も繰り返すことで、コンデンサの自然放電をカバーし、データの消失を防止しているという訳です。

上記の特徴から、DRAMはリフレッシュが不要なSRAMに比べて処理が遅く、消費電力が大きいという欠点があります。しかし、回路の構造が単純なため高集積化することが可能で、容量あたりの単価が安いという利点があるため、用途に応じてSRAMと使い分けられているのです。

DRAMの用途は?

DRAMは主に、パソコンのメインメモリ(主記憶装置)において、CPU(中央処理装置)とストレージ(補助記憶装置)の間でデータの受け渡しをする役割を担っています。

メインメモリとは、OSやアプリケーションを動作させるために使用する記憶領域のことです。また、CPUとは、さまざまなデータの処理を行う場所です。ストレージとは、記憶を保持する場所ですね。

例として、PCで何かしらのデータ処理をする際の流れを考えましょう。CPUがストレージに保存されているOSやデータをメインメモリに読み出し、そこで作業を行い、ストレージに書き込んでいく――といった流れで処理が行われています。

この一連の流れについては、「人がデスク上で作業をする場合」にたとえるとわかりやすいです。CPUを「作業をしている人」、メモリを「デスクの広さ」、ストレージを「引き出し」としましょう。

先ほどの一連の流れを書き換えてみると、作業をしている人(CPU)が引き出し(ストレージ)に保存されているデータを机(メモリ)に広げ、そこで作業を行い引き出しに戻す――という流れですね。

しかし、この際にCPUの処理能力は非常に高速であるため、DRAMによる処理速度との差が生じてしまいます。そこで活躍するのがSRAMです。SRAMは「キャッシュメモリ」として使われ、メインメモリに代わってデータの入出力を行うことで処理速度の差を埋める役割を持っています。

具体的には、CPUがメインメモリからデータを読み出す際、キャッシュメモリにも同じデータをコピーすることで、同じデータが再び出てきた際に、キャッシュメモリから自動的に読み出せるようにしておき、より高速な処理を実現する、という仕組みです。

まとめ

以上、DRAM、およびSRAMとの違いについて紹介しました。

パソコンやスマートフォンの仕様表ではメモリとしてDRAM容量が記載されていることもあるため、目にしたことがある方も多い言葉だったかと思います。DRAMの基本的な知識があると、新しいデバイスを購入する際の性能比較にも役に立つことでしょう。