韓国のアナログ・ミクスドシグナルデバイスメーカーであるMagnaChip Semiconductorは3月30日、同社のファウンドリ事業とそのウェハプロセスを担ってきた清州工場(Fab 4)を、韓国の投資会社Alchemist Capital Partners KoreaとCredian Partnersが設立したAC Consortiumに約4億3,500万ドルで売却することで合意したと発表した。このコンソーシアムには韓国社会信用協同組合連合会とファウンドリビジネスを強化しようとしているSK Hynixがパートナーとして出資しているという。Magnachipはこの取引による利益を活用し、負債の圧縮とバランスシートの強化を図る予定であるという。

Magnachipは現在、2つの8インチ(200mm)ファブを所有しているが、規模が大きな方が今回の売却対象となったFab4であり、1500名の従業員が新会社への移籍対象となる。MagnaChipは、残ったもう1つのパワーディスクリート8インチファブ(韓国・亀尾市)で、パワー半導体やディスプレイドライバの製造を行ってきた。

ディスプレイドライバとパワー半導体に集中

マグナチップの最高経営責任者であるYJ Kim氏は「今回の売却は、顧客、従業員、投資家を含むすべてのステークホルダーにとって素晴らしい成果をもたらすと確信している。当社はディスプレイ向けおよびパワーエレクトロニクス向け半導体製造に特化することで魅力的な高成長の機会に取り組む。有機EL(OLED)ディスプレイドライバビジネスにおけるリーダーシップの地位を築き、新たなMicroLED向けデバイスにも取り組んでいく。また当社のパワー半導体は、幅広い市場のニーズに対応しており、特に自動車市場の電気自動車向け要件を満たした理想的なデバイスである。また、この取引の結果として重要な新たな機会を得るファウンドリビジネスとその従業員にとって多くのメリットがあると確信している」とのコメントしている。

同社はスマートフォン(スマホ)向け2大パネルメーカー(LG DisplayおよびSamsung Display)への有機ELディスプレイドライバIC(DDIC)の世界トップクラスの独立系サプライヤーである。英国の市場調査会社Omdia(旧IHS Markit)の調べによると、2019年後半のスマホ向け有機ELパネル向けドライバICシェアはSamsungが60%、MaganaChipが27%を占めており、その他の企業が数%ずつといった状況となっている。

同社のOLED DDICのポートフォリオには、低消費電力の28nmプロセス採用製品なども含まれており、今後の5Gモデルや折りたたみモデルなど、スマホメーカーが繰り出すプレミアムモデルの主要半導体として期待されている。

一方、同社のパワー半導体事業は、スマホ搭載バッテリーの電力効率を高めるためのFETやスーパージャンクションMOSFET、IGBTなどのプレミアム製品を含む、標準パワー半導体がメインで、その用途はテレビ、民生、通信、産業用として広く、将来的には自動車分野にも市場を拡大していきたい模様だ。

事実上のSK Hynixによる非メモリ事業の買戻しか?

Magnachipは、2004年までHynix Semiconductor(前身はHyundai Electronics、現在のSK Hynix)の非メモリ部門であったが、同社の経営不振でHynixから分離され投資会社に売却された経緯がある。

その後、最近になってSK Hynixは、韓国政府の国策としての非メモリビジネス強化方針もあり、ファウンドリ事業を強化してきているが、今回のMagnachipによるファウンドリ事業および清州工場の売却の動きは、結局のところ、2004年に分離したファウンドリビジネスのSK Hynixによる買い戻しではないかと、韓国の半導体業界関係者からは見られているという。というのも、韓国内では、なかなかファウンドリビジネスが成長しないSK HynixがMagnaChipを買収するのではないかとのうわさが以前からあり、一方で、中国資本も同様な買収を模索しているといわれていた。