米携帯通信3位のT-Mobile USは4月1日 (現地時間)、ソフトバンクグループ傘下で同4位の米Sprintとの合併手続き完了を発表した。これまで米国の携帯通信市場はVerizon CommunicationsとAT&Tが携帯契約件数の首位を争い、T-MobileとSprintはトップから引き離された3・4位だった。合併によってトップ2社をわずかな差で追うところまで迫り、米携帯通信市場は3強状態で5G時代に突入することになる。
合併会社の事業名は「T-Mobile」、T-Mobile USの親会社Deutsche Telekomが株式の約43%を保有、ソフトバンクは約24%を保有する持分法適用関連会社になる。NASDAQにおけるティッカーシンボルは「TMUS」。合併完了に伴ってCEO (最高経営責任者)としてT-Mobileの成長を牽引してきたJohn Legere氏が同職を退任、社長兼COO (最高執行責任者)のMike Sievert氏が新CEOに就任した。
T-MobileとSprintの合併交渉の始まりは、2013年のソフトバンクによるSprint買収に遡る。ソフトバンクは当時米携帯通信3位だったSprintを買収した上でT-Mobileを合併して第三極を目指した。しかし、4大キャリアが3大キャリアになる統合に米当局が難色を示した。また、T-Mobileとの交渉も同社が「Uncarrier」戦略で契約者数を急速に伸ばし始めたことで難航。合併条件で合意に達せず、一度は物別れに終わった。
ところが一転、交渉再開から2018年に合意に至った。その背景には5Gへの移行がある。5Gネットワークの整備には巨額の投資が必要であり、高速なモバイルサービスにはケーブルTV会社なども参入チャンスを狙っている。5G時代の競争を勝ち抜くためには規模の拡大が不可欠であり、その実現を優先してSprint側が譲歩した。もう1つの課題となっていた競争阻害の懸念についても、1年以上にわたる審査を経て条件付きの承認を米司法省と米連邦通信委員会 (FCC)から取得、複数の州で合併差し止め訴訟が起こされたが、今年2月にニューヨーク州の連邦地裁が差し止め請求を棄却したことで合併手続き完了の状況が整った。
そうした経緯から、T-Mobileは合併後の競争の促進と消費者の利益を約束している。今後6年で、現在のT-Mobileよりもネットワークのキャパシティを14倍に拡大。契約者は数年内に現在のLTEよりも最大8倍高速な5G回線にアクセスできるようになる。6年以内に米国の総人口の99%を5Gでカバーし、90%に100Mbpsを超えるサービスを提供するとしている。