金属のチタンの表面に簡単な処理を施すだけで、生体の柔らかい組織と瞬時に接着するようになることを発見したと、岡山大学などの研究グループがこのほど発表した。新しい接着材として、医療への応用が期待されるという。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の岡田正弘准教授らのグループは、チタンの薄膜の表面を塩酸と硫酸の混合物を使って70度で10分以上処理し、水素化チタンに変化させた。これを皮膚の内側の層や筋膜などの生体組織に軽く押し当てると、すぐに高い接着力を生じることが分かった。処理によりチタンの表面が疎水化し、やはり疎水性を持つ生体組織との間に相互作用が生じて接着するとみられる。
研究グループによると、血液が固まる性質を利用した従来の医療用接着剤「フィブリンのり」と比べ、接着力は3倍以上だという。実用化すれば医療器具の体内への埋め込みや手術に応用でき、作業の簡便化につながりそうだ。
同大学の松本卓也教授は「のりやボンドは液状のものが化学反応で固化するが、今回の接着材はこれとは全く別で、見た目はただの金属の薄膜。世の中の既存の概念にはないもので、想像しにくいだろうが面白い。接着力をさらに高め用途を広げたい」と述べている。
グループは岡山大学と昭和大学、大阪大学、柳下技研株式会社で構成。成果は3月23日、ドイツの材料科学誌「アドバンスト・マテリアルズ・インターフェーシズ」の電子版に掲載された。
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