宇宙航空研究開発機構(JAXA)はこのほど、国際宇宙ステーション(ISS)への物資補給機「こうのとり」9号機を5月21日、H2Bロケットで打ち上げることを決めた。こうのとりは2021年度の改良型の登場を前に、最後の運用となる。

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    種子島宇宙センターで関係者に公開された「こうのとり」9号機(JAXA提供)

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    HTV-Xの想像図(JAXA提供)

計画では9号機は5月21日午前2時半ごろ、JAXA種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げられ、25日夜にISSに到着する。8号機に続き、ISSの主要電源となる国産のリチウムイオン電池を使ったバッテリー、実験装置や関連器具、宇宙飛行士の食料や生活用品などを搭載する。

こうのとりは全長約10メートル、直径約4.4メートルの円筒形で、2009年に初飛行した。輸送能力は荷物を収納する棚を含め約6トンで、現行の補給機で最大。大型の船外用物資を運べる唯一の宇宙船として、ISSに不可欠となっている。これまで8機が飛行しており、2015年に退役した欧州の補給機「ATV」とともに無事故を誇る。ISS到着時に、ISSの飛行士がロボットアームを操作して捕まえ係留させる独自のドッキング方式を、世界で初めて採用した。安全性が評価され、米国の民間補給機もこの方式を採用している。

JAXAは後継の改良型「HTV-X」で輸送能力を大幅に高める一方、機体構成の見直しなどでコストを低減する。外観は太陽電池パネルを翼のように広げた形で、円筒形のこうのとりとは大きく異なる。ISSのみならず、2020年代に米国主導で月の上空に建設する基地「ゲートウェー」への物資補給も視野に開発中。こうのとりに代わる名称を新たに公募するという。

HTV-Xがゲートウェーにドッキングする際に必要となる無線LAN通信技術の実験を、今回のこうのとり9号機が先行して行う。HTV-Xの担当者は「こうのとりが実績を積んで日本の存在感を高めてきた。将来にわたって活躍する機体を確実に開発し、次世代に引き継ぎたい」と述べている。

H2Bロケットは三菱重工業が打ち上げを担当。こちらも後継機「H3」の来年度の初打ち上げを前に、今回の9号機が最終号機となる。

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