日本電気(NEC)は3月27日、TBSテレビ及びインターネットイニシアティブ(IIJ)と共同で、災害時に「ローカル5G」を利用して地上波の同時配信を行う実証実験に成功したと発表した。同社によると、同様の実験の成功は国内初とのこと。
この新技術により、災害などによる停電でテレビ受像機が使用できない場合でも、スマートフォンなどで避難所などにおいて緊急報道番組の視聴を可能にし、またローカル5G(通信事業者以外の地域の企業や自治体など多様な主体が、自らシステムを構築可能とする第5世代移動通信システム(5G))の利用により地域に特化した災害情報の提供も可能になるという。
なお、同技術はキャリア5G(通信事業者が運営する5G)での応用が可能といい、全国規模の同時配信でも使用できるとのこと。
実験は、3月23日と24日の両日に実施。地上デジタル放送の電波をローカル5G基地局近くで受信し、TBSテレビの番組をNECのローカル5Gラボ内に設置したMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)サーバから同時に配信した。
今回は、5Gの特徴の1つであるMECサーバを用いて、CM(宣伝)などが流れているコーナーを該当地域に特化した災害情報にリアルタイムに差し換えて放送することに、日本で初めて成功したという。なお、同システムにおけるローカル5G設備などは、停電対策していることを想定している。
地上波テレビ番組5G同時配信の実現に向けたネットワーク構成の立案、ローカル5Gの実験免許の取得、5Gネットワーク環境及び地上波番組をエンコードするネット同時配信用のエンコーダは、NECが提供した。
また、MECにおいて動画配信機能の中核となる配信サーバ及びキャッシュサーバは、IIJが提供した。
実験では、災害時を想定したローカル5Gネットワークを使用した放送波受信による地上波番組のスマートデバイスへの配信、災害時を想定した地域や人に合わせたコンテンツ差し替え、MECサーバの使用によるネットワーク負荷の削減の3点を検証したという。
なお実験は、NECのローカル5Gラボ内でのクローズドな環境において、実験室の外に電波が漏れない形で行った。