Samsung Electronicsは、新型コロナウイルスによる韓国内の製造拠点の稼働停止を受け、プレミアムスマートフォン(スマホ)の生産をベトナムに切り替えようとしているが、そのためには数百名規模の技術者をベトナムに派遣する必要が生じており、協力会社含む1000名超の技術者らの例外的な入国申請をしているとロイターをはじめとする複数の海外メディアが報じている

Samsungがスマホ製造を韓国からベトナムに移管

Samsungはこれまでプレミアムスマホの製造を韓国の「亀尾事業所(Samsung Smart City Campus)」にて行ってきたが、度重なる新型コロナウイルス感染者の発生に伴う操業停止を受け、ベトナムへ生産を移管することを決定。今回の入国申請は、その移管に伴って、数百人規模の技術者を派遣する必要がでてきたため。また、併せてスマホに搭載する対策として、ベトナム工場への生産移管を決定したが、そのために数百名規模の技術者をベトナムに派遣する必要がでてきた。また、併せてSamsung Display湯井事業所で製造した有機ELパネルをベトナムでモジュール化するためにSamsung Displayならびに協力会社の技術者ら700名ほどもSamsung Displayのベトナム工場に派遣し、既存のパネルモジュールラインを新製品ならびに次世代製品向けに改修する必要が出てきており、その数は総勢1000名規模になると見られている。

しかしベトナムは現在、2月末から新型コロナウイルスの感染拡大している韓国からの入国を事実上禁止。韓国からの航空機の乗り入れも基本的に禁止しているほか、すでに発行済みのビザもすべて無効とし、新たな就労ビザは当面発行せず、韓国からの入国者は、14日間の指定施設への隔離を行うなどの措置をとっている。

例外的な入国申請を求めるSamsung

このような状況下で、Samsung Displayは、新型スマホ用パネルモジュールの生産に支障が生じることを防ぐために、技術者700人余に対する「入国制限措置」を例外的に除外することをベトナム政府に強く要請しており、ベトナム政府も3月13日付で約180名に対して例外的に入国許可を出した模様だ。

これを受けて韓国からの技術者たちは、同日、ベトナム政府が指定したベトナム北部クアンニン省にあるローカル空港であるバンドン空港に到着。約180人は、施設隔離を免除され、新規就労ビザもないまま、ベトナム北部のバクニン省のSamsung Display工場でほかの従業員と接触することなくデイスプレイ生産ラインの改修作業に当たっているという。Samsungグループは、残りの技術者らの例外的な入国に対する申請も行っている模様である。

  • Samsung

    Samsung Display Vietnam工場 (出所:Samsung Display Vietnam Webサイト)

ベトナム政府がSamsungからの要請を断れない事情

Samsung Displayは、2014年からバクニン省の工場でスマホ用パネルモジュールの製造を行っており、バクニン省とタイグエン省にあるSamsung Electronicsにある2つの現地工場はじめAppleやHuaweiなどスマホサプライヤにパネルモジュールを供給してきた。

Samsung Displayは、有機ELパネルの製造自体は、韓国の湯井事業所で行っているが、そのモジュール化はベトナムで行っている。また、Samsung Electronicsも自社ブランドスマホである「Galaxy」の大半をベトナムで製造しており、ベトナムでも最大規模の外資企業として、十数万人規模の雇用を生んでいるほか、ベトナムの輸出額の1/4を占めるほどとも言われており、ベトナム政府もSamsung関係者の入国要請については例外的な措置として応じざるを得ないようだという。

Samsungとしては、技術者を送り込むたびにビザを申請して、さらに入国後に14日間、施設隔離をさせられていては、新型スマホの出荷に支障をきたすうえ、次世代品の発売にも支障が生じるということで、今後も引き続き、多くの例外的な措置による入国許可を求めていくようである。