早稲田大学理工学術院の関根泰教授らは13日、低温ほどアンモニアの合成反応が速く進む新現象を初めて見つけたと発表した。化学の世界では、化学反応は高温ほど速いとする「アレニウスの法則」が広く知られている。低温で望みの物質を得ることができれば大幅な省エネが見込めるため、研究グループは他の物質合成反応についても探索する。
研究グループは水素と窒素からアンモニアをつくる反応で、触媒として1%のルテニウムを坦持した酸化セリウム半導体を使った。触媒に0.6~1.2ワットの電力をかけたところ、セ氏100度の反応速度が同200度のちょうど2倍になることが分かった。この温度範囲の低温側と高温側は、アレニウスの法則通り、高温ほど反応が速かった。
反応速度が100度近辺でピークを迎えるのは、電力をかけた表面にイオンがよく吸着するから、と研究グループはみている。赤外スペクトルで吸着量を電場の有無、温度の違いで評価して科学的なモデルを作り、モデルによる計算結果と実験結果を突き合わせると、両者が一致することを確かめたという。
著名なハーバー・ボッシュ法によるアンモニアの工業的な生産は、400度程度の高温と250気圧程度の高圧が必要であり、これに替わる省エネプロセスが求められている。関根教授らは2017年、半導体触媒に電力をかければ200度以下でも反応が進むことを明らかにしていた。
今回の成果は英王立化学会が出版する学術誌「ケミカル・コミュニケーションズ」(電子版)に13日掲載された。関根教授は「再生可能エネルギー由来の電力を利用し、低温での物質変換が可能になれば、化学の世界にパラダイムシフトをもたらすものになる」と話している。
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