「Black Swan(ブラックスワン)」とは、金融市場で事前に予測できず、起きた時の衝撃が非常に大きな事象を指すが、今回の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と、そのグローバル経済や半導体市場への影響は、まさにブラックスワンそのもので、非常に多くの不確実性を引き起こしている。そのため、新型コロナウイルスの感染拡大がいつ終息し、世界の安定化がいつになるのかがまったく読めない以上、世界の半導体市場の落ち込みも予測できない状況に陥ったと半導体市場動向調査会社の米IC Insightsが報じている。
10年以上前、米General ElectricのCEOであったJeff Immelt氏(当時)が「reset economy」という用語を生み出したが、IC Insightsでは、米中貿易戦争をはじめとした世界的なビジネスの混乱に加え、新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済の減速が予測される現在、この考えは、これからの半導体業界にも適用できるとの考えを示している。同社は2020年1月時点の市場予測として、2020年は堅調に半導体業界は市場回復に向けた体制が整うことで、前年比8%ほどの成長を提示していた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響がもっとも大きいアジア・太平洋地域に多くの工場があるため、市場の見通しを見直す必要がでてきたとしている。
なお、IC Insightsは「もしも新型コロナウイルスの感染拡大が短期的な事象であれば、半導体産業はV字型の回復を期待できる。数か月にわたるボトムの状態を経験したあとに徐々に回復して行くU字型回復となる可能性もでてきた。最悪は、市場が落ち込んだ後、当分の間回復を期待できないL字型であり、この状態が決して起こらないわけではなくなってきた具合に、現段階では先行きがどうなるかまったく予測できない状況となってきた」と市場予測の難しさを説明。2020年3月末に発行予定の同社会員向けのレポートを発行に併せて、なんとか下方修正した市場予測を発表したいとしている。米中貿易戦争などを中心とした世界経済の不確実性に、未曽有の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の不確実性も加わり、先がまったく読めない時代に突入してしまったようだ。