デルテクノロジーズ(デルおよびEMCジャパン)には、Dell Financial Services(DFS)と呼ぶ、ファイナンシャルソリューションを提供する部門がある。「デルの顧客体験を可能にし、豊かにするファイナンシャルソリューションを提供すること」を目的に設置された組織で、すでに20年以上の歴史を持つ。

そのDell Financial Servicesによって提供されるのが、新たなコンサンプション(消費)型の従量課金サービス「Dell Technologies on Demand」である。Dell Financial Servicesの取り組みと、Dell Technologies on Demandに迫った。

デルファイナンシャルサービス(DFS)は、1997年にスタートした組織で、当初は、北米市場からサービスを開始。現在では、欧州や南米、アジアなど、23カ国でエンド・トゥ・エンドのファイナンシングサービスを提供。全世界約50カ国において各種サービスを提供している。

リースに関わる融資をはじめとした伝統的なファイナンスモデルの提供だけでなく、コンサンプション型の従量課金モデルの提供も行っている。

ここ数年は、継続的に2桁成長を記録し、2019年度には72億ドル(約7600億円)の実績を達成。管理している資産は、102億ドル(約1兆850億円)に達している。さらに、コンサンプション型サービスは、40カ国で提供し、20億ドルの管理資産を持つ。コンサンプション型サービスは、DFSにおいては、すでに中心的なビジネスになっている。

  • DFSは、2019年度には72億ドル(約7600億円)の実績、管理している資産は102億ドル(約1兆850億円)に達している

Dell Financial Services パートナーソリューション担当バイスプレジデントのダレン・フェドローヴィッチ氏は、「調査によると、テクノロジーを購入する際に、資金調達に関わるサービスを利用したい企業は85%に達し、機器やソフトウェア、サービス、メンテナンスとともに従量課金サービスをバンドルしたいという企業は79%に達している。また、その一方で、IT予算が減少していると回答したITマネージャーは60%にものぼる。いまや、デジタル化における最大の障壁は予算と資産の不足となっている。とくに、中堅中小企業においては、テクノロジーに対するデマンドが高まっているものの、予算がないという課題があり、そこにギャップが生まれている。DFSでは、柔軟性と選択肢を提供でき、企業が最適なソリューションを実現する上で、自由度を持たせることができる。ギャップを埋める支援を行うことで、中堅中小企業にも力を与えることができる」と語る。

  • Dell Financial Services パートナーソリューション担当バイスプレジデントのダレン・フェドローヴィッチ氏

もともとファイナンシャルサービスは、デルとEMCがそれぞれに展開していたが、両社の統合にあわせて、体系を見直した経緯がある。

フェドローヴィッチ バイスプレジデントは、「旧EMCは、アウトソーシングビジネスにおいて、データセンターユーティリティモデルを採用。使った分だけを支払うという従量課金モデルを提供していた。一方で、旧デルは、Fair Market Value lease(残価設定型リース)や、PC as a Serviceを提供しており、お互いが得意とするサービスを組み合わせるとともに、一貫性をもったサービスを提供することに心がけた。また、DFSの専任チームにより、幅広いサービスを、顧客にアドバイスしながら提案する体制も再構築した。さらに、パートナーが再販できる仕組みを強化した点も、サービスの統合のなかでは重要な要素だった」と振り返りながら、「EMCでは、特定の顧客向けのプロセスや契約が存在していた。新たなサービスやプロセスに価値があると判断してもらえれば、それに切り替えてもらうが、いまだに旧来型のサポートを継続しているケースもある。継続することは大変だが、統合によって、お客様に迷惑をかけてはいけない。統合が顧客の阻害要因になることを避けるための措置である」とし、顧客優先の取り組みを行っていることも明かす。

デルテクノロジーズでは、10年以上前から従量課金モデルを展開しているが、これを本格化させたのは、2017年5月に、米ラスベガスで開催された「Dell EMC World 2017」で発表した各種サービスがきっかけになっている。このとき、Dell EMC VxRailとDell EMC XCシリーズで利用できる「DFS Cloud Flex for HCI」と、Dell EMCのすべてのストレージソリューションで利用可能な「Flex on Demand」、そして、PCを利用した「PC as a Service」の提供を開始した。

「デルテクノロジーズの最大の強みは、柔軟性と選択肢の広さだ。それは、DFSでも同様である。DFSが提供するサービスは、5000ドルでも、5000万ドルでもカバーすることができ、ハードウェア単体から大規模なシステムまでを対象にできる。他社の場合は、マネージドサービスなどを導入することを前提としたものもあるが、DFSにはそれがない。また、コスト効率を求めているのか、高いパフォーマンスやトランザクションを求めているかといったニーズや背景を理解して、それに則したオプションも提供できる」とする。

日本においても、DFSのビジネスは好調だ。

日本では、前年比2倍という成長を遂げており、「製品+ファイナンシャルサービス」による提案が評価されているという。

Dell Technologies(EMCジャパン) Dell Financial Services 日本および韓国担当リージョナルセールスディレクターの小川哲也氏は、「日本における従量課金型サービスは、もともとは容量の変動や見通しがつきにくいストレージに活用する例が多かった。だが、2018年から日本でもFlex On Demandの提供を開始するとともに、デルテクノロジーズの製品ポートフォリオの拡大に伴い、幅広い製品、サービスでこれが利用されるようになり、ビジネスが急拡大している。とくに、HCIのVxRailなどでの活用が増えている」とする。

  • Dell Technologies(EMCジャパン) Dell Financial Services 日本および韓国担当リージョナルセールスディレクターの小川哲也氏

こうしたなか、DFSのビジネスをさらに加速させているのが、「Dell Technologies on Demand」である。

小川氏は、「Dell Technologies On Demandは、幅広い支払いソリューションと基本サービスを統合して提供する幅広いコンサンプション(消費)モデルを提供するとともに、広範なアプリケーションとユースケースに対応した統合されたフルスタックソリューション、そして、革新的なインフラストラクチャーテクノロジーによって業界をリードするエンド・トゥ・エンドのポートフォリオの3つの特徴を持つ」と語る。

Dell Technologies On Demandのなかで、中核となるのが、「Flex On Demand」である。

Flex On Demandは、ワークロードにあわせた最適な使用量をもとに、それに応じた支払いが可能なコンサンプション型の支払いモデルだ。従来から、Dell EMCブランドのストレージ製品や、HCIであるVxRailを対象に提供してきたサービスだが、Dell Technologies On Demandのなかで提供されるようになったで、新たにx86サーバーの「PowerEdgeシリーズ」や、自律型コンバージドインフラシステム「PowerOne」にも適用できるようにした。

Flex On Demandは、基本容量の要件を予測して、ピーク時の使用をカバーする必要バッファ量を設定。基本容量を固定料金として請求し、バッファ容量の使用量にあわせて支払額が増減する仕組みだ。

「ストレージであれば全体容量の40~80%、サーバーであれば全体容量の70~80%を基本容量として設定できる。ストレージでは、ディスクの平均GB使用量で測定し、サーバーではCPUのコア使用時間の合計で測定することになる。また、自律型コンバージドインフラシステムのPowerOneでは、ストレージとサーバーの組み合わせによって支払額が決まることになる」(小川氏)

Flex On DemandのPowerEdgeへの適用は、アジアでは日本が先行。シンガポールやインド、中国にも対象を拡張しているところだ。

また、Dell Technologies On Demandでは、ビジネスの成長にあわせて、支払いソリューションのカスタマイズが可能な「Pay As You Grow」や、ITインフラ全体を対象にカスタマイズした課金モデルを提供する「Data Center Utility」も用意。加えて、サービスを組み合わせた形でコンサンプションモデルとして提供しており、サポートノウハウをAIベースのインサイトを活用し、生産性とアップタイムを最大化できるサポートサービスの「ProSupport」、テクノロジーの導入を促進し、少ない手間で迅速な展開と高いコントロールを実現するデプロイメントサービスの「ProDeploy」、顧客のITオペレーションをエンド・トゥ・エンドに管理できるマネージドサービスの「Client & Infrastructure」も提供している。

これにより、ProSupportの場合、年額支払いが中心であったものが、Dell Technologies On Demandのサービスとして提供されることで、月額での利用提案も増えることになる。

  • Dell Technologies On Demand

そのほか、PCの導入、運用においてサブスクリプションの仕組みを活用できる「PC as a Service」も拡張。従来は、150台以上を対象にしていたものが、Dell Technologies On Demandでは、20台から利用できるほか、ProDeployの組み合わせにより、社員一人ひとりにあわせた設定やカスタマイズを行って納品されることから、ひとり情シスの企業や、管理者がいない中小企業でも、容易な導入および管理を可能する。これらもコンサンプションモデルに組み込むことができるというわけだ。

Dell Technologies On Demandによって、コンサンプションモデルをパートナールートで展開する動きも加速させている。

Dell Financial Services APJ シニアディレクターのリーナ・ヤム氏は、「Dell Technologies On Demandは、顧客に柔軟性と選択肢を提供するだけでなく、パートナーにも選択肢と柔軟性を提供することができる。パートナーが持つ独自のサービスを、Dell Technologies On Demandのファイナンスソリューションのなかで提供したり、パートナーが持っていないソリューションだけを、デルテクノロジーズが持つ製品やサービスのなかから組み合わせて、Dell Technologies On Demandを活用できる。柔軟な組み合わせによって、パートナービジネスを加速することができる」とする。

  • Dell Financial Services APJ シニアディレクターのリーナ・ヤム氏

デルテクノロジーズでは、パートナービジネスの拡大に乗り出しているが、Dell Technologies On Demandは、それを加速する切り札にもなる。

とくに、パートナービジネスを重視している日本においては、その貢献度が高い。実際、DFSでは、全世界におけるパートナービジネスの比率は4割弱だが、日本では約7割に達している。

小川氏は、「Dell Technologies On Demandは、デルテクノロジーズのソリューションとパートナーのソリューションを自由に組み合わせて、柔軟な消費モデルとして提供できる。今後、DFSとパートナーとの連携をさらに強化することになる」とする。

DFSでは、今後、日本における投資を加速する考えを示す。

ヤム氏は、「デルテクノロジーズにとって、日本市場は非常に重要な市場であり、DFSを成長させる意味でも重要だと考えている。日本でのビジネスは倍増しているが、それにあわせて、日本に対する投資も倍増させている。今後3~5年も、この成長を継続することを期待している。引き続き、日本市場における成長をしっかりとサポートする」と語る。

小川氏も、「これまで以上に、DFSの認知度を高めたい。お客様の選択肢を広げる意味でも、知ってもらうための活動を増やしたい」とする。

Flex On Demandでは、新たな顧客層を獲得する実績があがっており、オンプレミスでコンサンプションモデルを活用する動きが顕在化している。

日本におけるDell Technologies On Demandを中核としたDFSの取り組みがますます注目されそうだ。