東京商工リサーチ(TSR)は3月9日、上場企業における「新型コロナウイルス影響」の調査結果を発表した。
この調査結果は、3月6日14時までに情報開示した上場企業436社と、TSRの独自調査により、工場や事業所、店舗の稼働休止など何らかの影響が判明した上場企業25社の、合計461社の上場企業における新型コロナウイルスの対応をまとめたもの。
情報開示した436社のうち、新型コロナウイルスの影響に言及したのは290社で、うち87社(30%)が業績などへのマイナス要因、業績予想の修正要因として新型コロナウイルスの影響を挙げたという。判明した修正額合計は、前回予想に比べ売上高が4,584億円、最終利益は1,057億円のマイナス。
また、203社(70%)が「影響の懸念がある」、もしくは「影響を確定することは困難で業績予想に織り込んでいない」とし、終息が依然として見通せず、企業業績への影響を確定させるにはさらに時間がかかるとTSRは予想している。
一方で、IT関連業者などを中心に、テレワーク支援のためにサービスツールなどの提供を案内するもの(24社)や、休校中の子供たちに向けた教育支援コンテンツの無償提供やサービス案内(10社)など、この機をビジネスチャンスと捉え、積極的にアピールする動きもみられたという。
業種別では、製造業が最も多く217社(47%)、次いでサービス業68社(14.7%)、小売業54社(11.7%)、情報通信業48社(10.4%)と続く。感染拡大防止策として、各種イベント等の自主的な延期・中止や運営施設の休業が相次ぐほか、集団感染が発生したスポーツジム業界でも当面の休業が相次いでいる。感染拡大の進行でインバウンド需要の停滞に加え、消費低迷やイベント自粛などが企業業績に悪影響を及ぼしており、今後も個人消費の減退が進むなか、あらゆる業種への波及が懸念されるとしている。
TSRが実施した第2回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査(3月2日~4日中間集計速報値、有効回答1万408社)では、94.8%の企業が「すでに影響が出ている」、または「今後影響が出る可能性がある」と回答。第1回アンケート(2月7日~16日実施)では何らかの「影響がある」企業は合計66.4%にとどまっていたが、わずか2週間で28.4ポイントアップしており、新型コロナウイルスの影響を受けることが避けられない状況になりつつあるとしている。
一方、東日本大震災の時と比較すると、新型コロナウイルスの影響を情報開示した上場企業は現時点で約4分の1にとどまっており、TSRは「感染拡大による直接間接の影響がいまだに見通せないことが背景にある」と推測。多くの上場企業が本決算を迎える年度末にかけ、新型コロナウイルスによる影響がさらに表面化する可能性が高まっているとしている。