韓国のシリコンウェハメーカーであるSK Siltronは米国の大手化学メーカーDuPont子会社のDuPont Electronics and ImagingのSiCウェハ製造事業の買収を2月29日付で完了したことを発表した。

買収総額は4億5000万ドルで、米国はじめ関係各国の独占規制当局の承認を待っていたが、当初予定していた2019年末から約2か月ほど遅れて承認が下りた形となった。

SK Siltronはこの事業買収後、米国ミシガン州にあるSiC製造工場に新たな設備投資を実施することで、SiCウエハの生産量を増加させ、米国で新たな雇用の創出を図るとしている。

また、この買収により、新たな成長エンジンとして急速に拡大するSiC分野に参入を図りつつ、現在の主要ビジネスであるシリコンウェハの製造とSiCウェハの製造との間での研究開発や生産能力についての相乗効果を目指すとしている。

同社によると、300mmウェハ市場の約17%を占めるグローバルウェハメーカーのトップ5の1社であり、主要取引先も韓国のSamsung Electronics、SK Hynixに限らず、TSMC、Micron Technology、Texas Instruments、キオクシアとグローバルに広がっているという。また、米国のSK Siltron子会社からはIntelをはじめとする米国半導体企業8社にシリコンウェハの供給を行っているとしており、今回のDuPontの販売網を加えて、既存の販売網と併せていくことで、SiCウェハの拡販を目指すとしている。

SK Siltronは、SK Groupの持ち株会社SK Holdingsの子会社だが、そのSK Groupは北米をグローバルハブにし、米国で電気自動車、材料、バイオ、エネルギー、バッテリーなどの成長分野に、過去3年間で50億ドルの投資を実施してきており、今回の買収もその一部であるという。今回の買収を主導したSK Holdingsの投資部門では、「自動車メーカー各社が電気自動車市場に参入しようと急いでいるほか、通信会社が5Gネットワーク拡大を進めようとしていることを背景に、パワー半導体の需要が急速に増加。SiCウェハは、そうしたニーズに対応することができる材料として、今後の成長が期待できる分野」と今回の事業買収に至った背景を説明している。

なお、韓国の半導体業界に詳しい関係者によると、「SK Groupは傘下に電気自動車向けバッテリを手掛けるSK Innovation、5G通信も手掛けるSK Telecomを所有しており、今回のSiCウェハ事業の買収はそうした車載バッテリや5Gビジネスとの相乗効果を狙ったものだと思われる」と語っている。