半導体材料ベンチャーが3100万ドルを資金調達
極端紫外線(EUV)リソグラフィ向け高解像度金属酸化物フォトレジストのベンチャー企業である米Inpriaは、2020年2月にシリーズCとして新たに3100万ドル(約33億円)の資金調達をフォトレジストメーカー大手のJSRが主導する企業連合から獲得することに成功したと発表した。同社は2017年にも2350万ドルの資金調達を行っている。
今回の資金調達は主導的立場のJSRのほか、台TSMC Partners(TSMC傘下の投資会社)、韓SK Hynix、仏Air Liquide Venture Capital ALIAD(Air Liquid傘下の投資会社)、米Applied Ventures(Applied Materials傘下の投資会社)、Intel Capital(Intel傘下の投資会社)、韓Samsung Venture Investment(Samsung Electronics傘下の投資会社)などが参加した。SK HynixとTSMCは今回初めての参画となるが、それ以外は前回から引き続いての追加投資ということになる。InpriaのWebサイトでは、このほかの投資企業として東京応化(TOK)と米ベンチャーキャピタル2社の名前が挙がっている。TOKは2016年にInpriaに150万ドルを出資したことを明らかにしている。
Inpriaの金属酸化物フォトレジストは酸化スズのナノクラスターで構成されており、従来のポリマーベースのレジストと比べてより少ない量でEUV光をより多く吸収するように調整しており、かつポリマーに比べて粒子サイズも小さいことから、解像度の向上が可能になるとしている。Inpriaによれば、同社のフォトレジストは高いエッチング選択性を備えており、製造フローを簡素化し、プロセスウインドウを拡大して、コスト削減を図ることができるとしている。
TSMC、Intel、Samsung Electronics、SK Hynixなど主要なEUVを活用することを掲げている半導体メーカー各社と、そこに装置などを供給する主要なエコシステムの材料メーカーが開発の援助を行ってきたわけだが、なぜこれほどまでに新型レジストの実用化が求められるのだろうか。
EUVの実用化の鍵を握るレジスト材料
EUVを用いた量産には長年にわたって「EUV光源」、「レジスト」、「マスク欠陥/ぺリクル膜」、「計測・検査」の4つが課題とされてきた。最大の問題であった光源の出力問題は、近年、高出力の光源の実現にめどがたったことから、最近は最適なレジスト材の開発が大きな課題とされるようになってきた。
従来の高分子有機物(ポリマー)ベースの化学増幅型レジストは、「解像度」、「ラインラフネス(ライン幅ラフネス(LWR)およびラインエッジラフネス(LER)」、「感度」が相反関係(いわゆるResolution-Line Roughness-Sensitivity Tradeoff("RLS Tradeoff"))にあり、これらの課題を同時に改善することはできなかった。例えば微細化に伴うLERを改善しようすれば、解像度の低下を招くこととなる。この課題のため、EUVは3nm以降(あるいは未満)の量産には、従来の概念にとらわれないRLSのトレードオフを克服できる新規レジスト材の設計開発が求められるようになってきており、同社のような企業に注目が集まるようになってきた。