市場調査会社の米Gartner(ガートナー)は、2020年の半導体市場について、2019年12月に予測した前年比12.5%増の4707億ドルから、新型コロナウイルスの影響により、2.3ポイント(108億ドル)引き下げた同9.9%増の4599億ドルへと下方修正をしたことを明らかにした。

また、この下方修正はAppleが生産が遅れていることなどを明らかにする前に、中国・湖北省での新型コロナウイルスの封じ込めにより2020年3月末までに終息するというベストケースを想定したものであり、シニアプリンシパルアナリストの山地正恒氏によれば、「下方修正を行った後に発生している各種の影響を加味すると、さらなる下方修正をする可能性があるが、いつ終息するのかが分からないため、予測が困難になっている」という。

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    ガートナージャパン シニアプリンシパルアナリストの山地正恒氏

直近では半導体メモリベンダ大手2社を有する韓国で新型コロナウイルスの感染拡大が一気に進む状況となっている。2020年2月25日時点でまだ半導体工場の稼働が停止した、という話は出ていないが、もし止まったとしても、「メモリは依然として在庫があるので、工場の稼働が少々止まったとしても、すくに足らなくなった、という話にはならないとみている。2020年はメモリ価格も上昇に転じて、市場としても成長が予測されているが、工場が止まって需給バランスに変化が生じれば、価格の上昇速度が加速する可能性もある」(同)とする。

とはいえ、半導体産業そのものは2023年に向けて緩やかな成長が続くこと自体に変化がなく、特に自動車、産業機器市場、ワイヤレス、ストレージが大きな伸びが期待できる市場だとしており、中でも「ワイヤレスやストレージも大きく市場拡大が期待できる市場だが、プレイヤーが限られており、より多くのプレイヤーが参入し、恩恵をあずかれる自動車と産業機器に対する注目度は増していくことになる」(同)とする。

また、「例えば自動車と一言で言っても、伸びているのはADAS/自動運転分野や電動パワートレインなど、これから搭載されていく技術分野」(同)であり、そうした新興市場のシェアをいかに獲得できるかが、今後の市場での成長の鍵を握るとする。

一方、プレイヤー数が限られているワイヤレスのけん引役はスマホ端末であり、ストレージのけん引役はクラウドだとしている。特にクラウド分野のサーバではストレージクラスメモリ(SCM)をはじめとしてNANDフラッシュメモリの適用領域拡大が進んでおり、今後もニーズは堅調に推移するとみられるという。

なお、同社は2020年1月に2019年の半導体企業ランキングの速報値を、2020年2月に2019年の半導体消費企業ランキングの速報値をそれぞれ発表しているが、半導体企業ランキングの確報については2020年3月末ころ、半導体消費企業ランキングの確報については同4月後半に、それぞれ同社のクライアントに対して開示する予定であるという。