サイボウズは2月25日、都内で2019年12月期の決算発表と2020年度の事業戦略説明会を開催した。同社 代表取締役社長の青野慶久氏が出席し、説明を行った。

売上高が過去最高を更新 - 前年に引き続き好調なクラウドがけん引

同社では業務アプリ作成プラットフォーム「kintone」、中小企業向けグループウェア「サイボウズ Office」、大規模・中小企業向けグループウェア「Garoon」、メール共有ツール「メールワイズ」をはじめとしたグループウェア事業、APAC・米国といったグローバル事業、企業研修プログラムなどのメソッド事業を展開している。

同社の2019年12月期の連結売上高は前年比18.7%増の134億1700万円、営業利益が同57%増の17億3200万円、経常利益が同%増の18億400万円、当期純利益が同%増の10億1200万円となった。

  • 2019年12月期の業績概要

    2019年12月期の業績概要

青野氏は「連結売上高・営業利益ともに過去最高となり、クラウド関連の売上高は前年比で128%の成長率、比率は71%に達した。クラウドサービスを開始した2011年から売り上げは拡大したが、営業利益は減少していた。これはデータセンターの運用や開発を含めクラウド化に先行投資したためであり、2015年には赤字に陥ってしまった。しかし、そこから4年でV字回復を果たし、現在ではクラウド投資の死の谷を越えて利益が出やすい状況になっている」と述べた。

  • サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏

    サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏

2019年12月時点において、主力製品の実績はkintoneが1万4000社、Officeは6万6000社、Garoonは5400社、Mailwiseは8800社に達しているという。

  • 各製品の導入状況

    各製品の導入状況

kintoneは売り上げが前年比1.4倍、契約者数が1.3倍とともに順調に成長し、多種多様な業種・規模で利用が拡大しており、現場での業務改善を対象としていることから非IT部門での導入は82%(IT部門は18%)にのぼり、パートナー企業数は約450社、連携サービスは300社となっている。導入事例としては京都府南丹市において自動虐待防止の地域連携や、千葉県市川市では自治体専用閉域ネットワーク「LGWAN」に対応している。

  • 「kintone」の導入推移

    「kintone」の導入推移

また、Officeは4年連続で最高売り上げを達成し、阪急ウェディングや社会福祉法人であるみやびで導入されている。

  • 「サイボウズ Office」の導入推移

    「サイボウズ Office」の導入推移

さらに、Garoonはクラウド版の売り上げが順調に増加を続けており、大規模・中堅組織でもクラウドが主力になりつつあり、阪急阪神ホールディングスはグループ経営の効率化に向けてグループ共通のグループウェアとして採用し、今年2月には茨城県が1万ユーザーの導入を決定している。

  • 「Garoon」の導入推移

    「Garoon」の導入推移

2019年は、API連携強化やMicrosoft Office 365などの他製品連携などを盛り込んだGaroon 5をリリースし、2020年はカスタマイズのパッケージング(プラグイン)やポータル活用支援の拡充をはじめ、連携性と拡張性を強化し、アップデートしていく方針だ。

  • 「Garoon」のアップデート概要

    「Garoon」のアップデート概要

加えて、Mailwiseは全体売り上げの約80%がクラウドとなり、今後は営業向けの市場拡大を狙ったプロモーション施策に取り組み、ターゲットの新規開拓を進めていく。

  • 「Mailwise」の導入推移

    「Mailwise」の導入推移

グローバル事業に関してはkintoneを軸に事業展開しており、中華圏ではターゲットを日系企業から現地企業に切り替えたこともあり、前年比3%増の1030社となったものの、APACでは同39%増の590社、米国では同33%増となった。インドネシアで配車大手のGo-Jekへの導入に加え、米国ではLyftへの導入やAmazon Web Services、Zuoraを基盤としたkintoneの提供開始について触れていた。

  • グローバル事業の概要

    グローバル事業の概要

メソッド事業については、サイボウズチームワーク総研が提供する講演が前年比26%増の152件、研修が同3.5倍の60件とり、チームワークを題材とした絵本の出版のほか、チームワークや職場における風土・環境などをテーマにしたリサーチ活動を開始するなど調査PR活動に注力している。

2020年度の展望

一方、2020年12月期の数値目標は売上高が151億5100万円~154億5100万円、営業利益が13億2400万円~21億2400万円、経常利益が13億8600万円~21億8600万円、当期純利益が6億4000万円~14億4000万円を計画している。

  • ,2020年12月期の業績予想

    2020年12月期の業績予想

青野氏は「チームワークの創出にはグループウェアによる情報共有が必要となる。情報共有という使い古された言葉だが、再考の余地があると感じている。Eメールは宛先を選んで情報共有するため、宛先に入らない人は共有されない。本来であればオープンな環境での情報共有が必要であり、他の人を巻き込めばノウハウも引き継げ、情報格差のない組織が作れるが10年以上前からできていない。情報のサイロ化が進み、共有されずに分断が進んでおり、広く、あまねく、すべての組織のメンバーがすべての情報にアクセスすべきだ」と指摘する。

そのような状況に対して、同社は2020年においてkintoneを軸にした1つのプラットフォームでの情報共有を示している。同氏は「製品的にはレベルを向上しなければいけないため、kintoneの開発を高速に進めている」と胸を張る。

  • kintoneを軸にした1つのプラットフォームでの情報共有

    kintoneを軸にした1つのプラットフォームでの情報共有

すでに今年に入り、kintoneは計算式にIF関数とAND/OR/NOT関数の追加や、モバイルアプリでシングルサインオン(SAML認証)が利用可能になったことに加え、2月にはレコード一括更新でテーブルの変更が可能になり、ROUND関数、ROUNDDOWN関数、ROUNDUP関数を追加

さらに、3月にはレコード一覧の列幅をアプリ設定に保存する機能の追加や、ルックアップフィールドを関連レコード一覧の表示条件に指定可能になるなど、随時アップデータをしていく考えだ。

  • kintoneのアップデート概要

    kintoneのアップデート概要

また、これまでの国内外におけるノウハウを集約し、グローバルに横展開できるモデルを作り、パートナー開拓や拠点開設を推進していくという。