imecは、米国サンフランシスコで開催された半導体の国際学会「ISSCC 2020」にて電子ピル用ミリスケールワイヤレストランシーバについて発表した。

被験者が飲み込むと、腸などの消化器の健康パラメーターを測定し、体外にリアルタイムでデータを送信できる自律摂取型センサシステムを実現するためのimecの研究開発プロジェクトの最初のブレークスルーだという。

従来、消化器官に対する診断は内視鏡検査や便サンプル分析などで行われるが、身体への負担が大きかったり、1回限りの観察であったりと課題があった。飲み込めるほど小さなヘルストラッカーと呼ばれるピルが長期間にわたって消化器官の各所の情報を収集し、その情報をリアルタイムで体外に送信できれば、身体への負担を軽くしつつ、消化器疾患の診断精度の向上を図ることが可能なる。

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    imecが開発した電子ピル(左)とミリスケールワイヤレストランシーバ(右) (出所:imec)

ただし、そうした電子ピルを実現するためにはセンサが、体内でデータを収集している期間中、高い信頼性でデータの伝送を行う必要があり、それを容積、電力、パフォーマンスの制約を満たしつつ実現するワイヤレスリンクを開発する必要があったという。

今回開発されたimecのワイヤレストランシーバは、MICS(Medical Implant Communication Service)、MEDS(Medical Data Service)、MedRadio(Medical Device Radiocommunications Service)などの医療用400MHz周波数帯域をサポートしたもので、40nm CMOSプロセスを用いてオンチップのチューナブルマッチングネットワーク(TMN)を搭載し、小型の400MHzアンテナを使用することで、外部コンポーネントを不要にし、実用的なサイズを実現したという。

なお、アンテナを含むトランシーバモジュール全体の体積は55mm3未満で、これまで報告されているデバイスに比べて1/30以下のサイズとなり、ワイヤレスモジュール全体の面積も3.5mm×3.8mm2のプリント基板とミニチュア400MHzアンテナを含みながらも3.5mm×15mmに収めることに成功したとしている。