米Alphabetの子会社であるLoon LLC(ルーン)とソフトバンクの子会社であるHAPSモバイルは2月6日、ソーラーパネルを搭載した成層圏通信プラットフォーム向け無人航空機「HAWK30(ホークサーティー)」用のペイロード(高高度飛行体に搭載する通信機器)を共同で開発したと発表した。
HAWK30で使用するペイロードのデザインと開発した2019年4月以降、Loonが運用する成層圏気球においてすでに活用されているペイロード技術をHAWK30に適用することを目指し、両社の技術チームが協力しており、秒速約27mにもなる風速やマイナス90度にもなる気温など、成層圏の厳しい環境下で長時間飛行しても安定して稼働するペイロードの開発実績を持つLoonのノウハウが活かされた。
今回共同で開発したペイロードは、さまざまなコンポーネントで構成されており、成層圏に浮かぶ基地局の役割を果たし、ミリ波の通信システムで機体と地上の通信接続ポイント間のバックホール回線を提供するほか、成層圏で飛行する複数の機体間の通信を実現するという。
ペイロードに搭載されている高精度アンテナにより、最大700kmの距離のP2P(ポイント・ツー・ポイント)通信において、最大1Gbpsのデータ通信速度が可能になることに加え、通信を維持するために機体の動きに合わせてペイロードのアンテナが自動追従するように設計されている。
これらの技術はLoonの成層圏気球ですでに活用し、地上の通信接続ポイントや隣接する機体間の安定した通信接続が実証されており、直近で行われたLoonの実証実験では4000kmの範囲にわたり、浮遊する20機の成層圏気球の接続に成功している。
時速約100kmで飛行するHAWK30に搭載することを想定し、Loonの技術チームは速い飛行速度で移動を続ける機体間でも安定して通信ができるように開発したほか、速い飛行速度であっても機体と地上の通信接続ポイントとの接続が切れないように、ペイロードのアンテナが自動追従するようにソフトウエアを改良している。
そのほか、速い飛行速度によって発生する強い風圧からアンテナを保護するカバーも開発。HAPSモバイルは、Loonに対して、今回のペイロードの開発にあたり、HAWK30の飛行要件定義や通信技術要件などを提供している。
また、ペイロードは3GPP準拠のさまざまな周波数帯に対応するように設計されたLTE通信システムを備えており、HAWK30は地上にあるスマートフォンなどの携帯端末に直接LTEの通信ネットワークを提供することを可能としている。ペイロードとミリ波の通信システムを組み合わせることで、通信ネットワークが整っていない場所や地域にいるスマートフォンの利用者に対して、安定したインターネット接続環境を構築することができるという。