Samsung Electronicsが、「半導体製造プロセスを合理化し、競争力を強化するために2020年末もしくは2021年初頭にも次世代DRAMの生産にExtreme Ultraviolet(EUV)露光技術を適用する見込みである」と複数の韓国メディアが伝えている。

例えばBusinessKorea 電子版(1月29日付)によると、Samsungは1Z-nmプロセスかその次の1α nmプロセスからの適用する予定だという。SK HynixもすでにDRAM向けEUVリソグラフィのテストしているとされるが、量産への導入時期は当初の想定よりも遅れそうだと言われているほか、米Micron Technologyも、2019年12月に開催した電話会議の中で、EUVの量産導入については1γ nmプロセス(1αの次の世代)になるだろう、とコメントしている。

すでにロジックでの量産に活用が進むEUV

すでにEUVリソグラフィそのものは、TSMCが7nmプロセスの改良版であるN7+でロジックIC向けに提供して、多くの顧客から生産を受託している。2020年中に本格量産が始まる5nmプロセス(N5)では、さらに多くのレイヤにEUVが適用されるが、すでにAppleの次世代iPhone向けプロセッサや、Huaweiのハイエンドスマートフォン向けプロセッサなどが生産されることが噂されている。

Samsungも、華城(ファソン)工場のロジックファウンドリS3棟でEUVの活用を開始していたが、S3棟に隣接する敷地に建設中だったEUV棟が2019年末に竣工、2020年春からロジックファウンドリでのEUVを適用した量産に本格的に取り組む計画としている。2019年秋、SamsungのロジックファウンドリではEUVを適用した7nm製品の製造歩留りが低く、その原因はEUV工程であり、EUVを使いこなしているTSMCが7nmでは一人勝ちとなっていると一部のメディアが報じていたが、この件について、Samsung Foundryの担当者は、2019年12月に東京で開催されたSEMICON Japanの技術講演の際にEUVに関するトラブルを否定しており、真相はやぶの中となっている。

また、かつてプロセスの微細化の最先端を独走し、EUVも真っ先に量産に導入すると思われていたIntelは、いまだに10nmプロセスの量産に苦心する様子が伝えられており、MPUの供給不足が続くなど、EUVを導入するような状況にはない模様である。

  • EUV
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  • ASMLと共同でプロセスの微細化について研究を行っているimecに設置されているASMLのEUV露光装置とその内部イメージ (出所:imec Webサイト)

2020年、EUVは35台が出荷予定。金額規模は45億ユーロ

EUV露光装置は、ニコンおよびキヤノンの日本勢が開発から撤退したため、オランダASML1社が独占状態で販売している。そのASMLによると、EUVの出荷台数は2018年で18台、2019年に26台で、2020年には35台の出荷が予定されているという。同社CEOのPeter Wennink氏によると、その総額は45億ユーロ相当であり、1台当たりの平均価格にすると為替にもよるが約160~190億円程度と計算される。2021年も45~50台程度を出荷する予定だとしているが、いずれの出荷先がどこであるかについては明らかにしていない。

またPeter Wennink CEOは、2019年第4四半期および年間業績発表に際し「2019年第4四半期に8台のEUVを出荷し、9台のEUVを受注した。主にDUVとEUVの両方を必要とするロジックでの需要が高く、年間で62億ユーロ相当のEUVの受注を記録した」とコメントしている。

中国へのEUV出荷が停止

ASMLではTSMCやSamsungのほか、中国SMICからもEUVを受注しているものの出荷ができていないとしている。これは同社の意志によるものではなく、オランダ政府から中国向け輸出ライセンスの更新が許可されなかったためだという。

米国のポンペオ国国務長官が、オランダの最先端半導体製造技術が中国に輸出されるのを阻止するため、オランダ政府にEUVの中国企業への輸出禁止を要請したといわれており、オランダ政府が米国政府の要請を受けてEUVを中国に輸出することを許可しないことに関して駐蘭中国大使がオランダ政府に抗議している。

ロジックに続いてDRAMにもEUVが適用されるようになれば、1台150~200億円ともいわれるEUVを独占販売するASMLの売上高は今後、拡大していくことが期待され、半導体製造装置企業の売上高ランキングで再びトップになる可能性がでてきた。