半導体・電子部品商社マウザー・エレクトロニクスの日本での存在感が着実に高まってきている。2019年、半導体市場はメモリバブル崩壊の影響を受け、前年比でマイナス成長を余儀なくされ、その余波はマウザーのようなエレクトロニクス商社にも及んでいる。しかし、同社日本法人は前年比で約9.5%増というほぼ2桁の成長率を達成、Webサイトに訪れる月間のユニークユーザー数に至っては、昨年末、ついに国内におけるネットを主体とした半導体/エレクトロニクス商社のトップに立った(同社による推定)という。
マウザー・ジャパン総責任者でマウザー本社日本担当バイスプレジデントでもある勝田治氏は、「2019年のグローバルの売り上げは前年比で約1%減。地域別では北米が同4.4%増と伸びた一方で、欧州が約3.8%減、アジア・太平洋が約9.0%減となった。ただし利用してくれる顧客数自体は増加傾向にあり、2020年はグローバルで売り上げが回復するものとみている」とグローバルの動きを説明。アジア・太平洋地域が大きく減速した理由は大手EMSからの需要が減退したため。メモリバブル崩壊や、世界経済の軟調による販売不振といった影響をもろに受けた結果となった。
その一方で日本はプラス成長、しかもほぼ2桁という伸びを示した数少ない地域で、同社では「ほかの大手ネット半導体/エレクトロニクス商社は軒並み減収減益となったとみており、我々の戦略と他社の戦略の違いがでた。結果として、これまでマウザーは3-4番手の位置にいたのが、現在は2-3番手のグループにたどり着いた」(同)と、着実にステップアップを果たしているとの見方を示す。
同社が売り上げを落とさず、プラス成長を遂げた最大のポイントは、ターゲットセグメントを数が出る量産ではなく、設計開発に絞り込んでいるため。市場の停滞により量産される数が減れば商社から出荷される部品の数も絞られ、結果として業績の悪化を招く結果となる。しかし、同社は要望があれば量産セグメントにも対応はするものの、基本は少量多品種を要する開発段階のユーザーにすばやく必要な商品をワンストップで提供できる体制を構築している点が強みであり、「日本は新規顧客の数が前年比で2桁%の伸びを示し、活用の頻度が増加した」(同)ということが成長の鍵になったという。
また、パートナーであるマクニカともコラボレーションしたマーケティング活動を進めており、共同で運営する「Macnica-Mouser(マクニカマウザー)」のWebサイトからの売り上げも増加したとするほか、展示会への参加も積極的に実施。特に関西方面での認知度はまだ低く、そうした地域での展示会に出展するなど、周知活動を強化した結果、月間のユニークユーザー数が増加したものと同社ではみている。
さらに2019年秋からは日本法人を通しての伝票発行を可能とした。これにより、日本の銀行でも支払いが可能になり、よりユーザーにとっては使いやすくなったほか、これまで海外との取引が社内規約などの関係から難しいという企業でも同社と取引をしやすくなった点なども成長の後押しになったという。
なお、同社は製品の保管・出荷を担うテキサス州ダラスの本社ロジスティクス施設の拡張を進めてきたが、このほど建屋が完成。現在は自動で注文のあった部品をピックアップするロボットの稼働テストを進めている段階で、2020年第2四半期中に本格稼働を開始する予定だとしている。また、倉庫面積が拡大すれば、現在の同社の取扱品目数102万強をさらに増やせるとしており、これまで以上にワンストップで必要な半導体/電子部品を提供することが可能になるとしている。