日本交通ホールディングスとディー・エヌ・エー(DeNA)は2月4日、DeNAが運営する次世代タクシー配車アプリ「MOV」の事業と、日本交通の子会社であるJapanTaxiが運営するタクシーアプリ「JapanTaxi」の事業を統合し、新会社として活動していくことで合意したことを明らかにした。
日本交通の代表取締役である川鍋一朗氏は、「東京五輪に向け、タクシー業界として進化を遂げてきたつもりだが、残念ながら、多くの人から、まだまだ課題が残されている。どうすればもっと早くタクシーが進化するのか、日々考える中で、MOVのサービスはマーケティング的に良いものを出しており、ITメガベンチャーとしての技術力を見せつけていた。なにより、タクシー業界とまっすぐに向き合って、業界を進化させることに全力で向き合ってくれている。こうした本気の姿を見るにあたって、マッキンゼー・アンド・カンパニー時代に私の上司であった南場さんがDeNAの創業者でもあるということで、一緒に組んだらよいコンビになれるのではないか、という話になり、MaaSのラストワンマイルをタクシーが担うことを目指し、進化を進め、日本のモビリティが世界一だと多くの人に言ってもらうために一緒にやろうと決断するに至った」と、今回の合併の背景を説明。こうした背景もあり、今回の事業統合はあくまでお互いの強みを持ち寄って移動の未来を創っていくための対等なる統合であることを強調した。
事業統合により、新会社の加盟車両は10万台規模となり、全国に配備されているタクシー車両22万台の約半数という日本最大級のモビリティサービス提供企業となる予定。統合後の出資比率は日本交通、DeNAともに38.17%ずつで、残りの23.66%はその他が保有することとなる。取締役数も日本交通2名、DeNA2名で川鍋氏が代表取締役会長に、DeNAの常務執行役員 オートモーティブ事業本部長の中島宏氏が代表取締役社長にそれぞれ就任する予定だという。
新社長に就任する中島氏は、「日本の月間輸送回数約1億回のうち、アプリ経由の輸送回数は、我々が運営している2つの事業以外の国内の主要サービスすべてを足して、多く見積もっても約2%程度しかないという調査結果がある。つまり、日本は配車アプリ後進国ということであり、その事実から、さまざまなタクシー、モビリティを取り巻く課題解決が1社ではできないということを感じていた。それが今回の協議に至る背景にあった。結果として、タクシーに乗りたいと思っても、乗りたいときに乗れない、タクシーを使いにくい、という課題が残ったまま、乗務員の高齢化や人手不足が進んで、車両事態の供給量は減少し、生産性の向上という課題も生じている」と、現在、タクシー業界が突き付けられている課題を説明。その問題の解決がライドシェアで図れるのか、という点についても、「すでにグローバルのライドシェア先進国では、労働問題、犯罪、環境問題といった側面から再規制の話が出ている。こうした流れをとらえずに、周回遅れでライドシェアを解禁しても、2周遅れで再規制に追われることが目に見えている。日本にはすでに鉄道やバスなどの質の高い交通産業が多々あり、こうした整備された環境に単に海外のスキームを持ち込んでも無理がある。日本のタクシーも安心、安全の品質という面ではこれまでの業界努力により、世界トップクラスであり、こうした日本らしい良い点を踏まえ、最先端の事例を生み出すためにはどうすればよいか。単にライドシェアを解禁するのではなく、逆に最先端の現象を日本で起こす必要がある。そのためにも事業を統合して、互いの強みを発揮していく必要性がある」と、ライドシェア以上によいサービスを日本独自で生み出す必要があるとし、そのための新会社であるとした。
新会社は2020年4月1日付で事業統合がなされる予定で、統合後、互いの強みを持ち寄ることで、タクシー産業が抱えるさまざまな課題の解決に向けた取り組みを加速していくとするほか、タクシーのシャトル(相乗り)活用や利用頻度に応じたダイナミックプライシングの導入など、よりユーザーの使い勝手向上に向けた新たな取り組みの検討を進めていくことで、交通弱者、渋滞、事故といった日本の交通に関する課題解決のみならず、高齢化、都市化、気候変動といった社会課題そのものの解決も目指していきたいとしている。