調査会社ニールセン・カンパニーは、同社のニューロサイエンス(神経科学)に対する取り組みと事例としてダイドードリンコを紹介した。
同社は2005年、米カリフォルニアニューロフォーカス社創立以来、 ニューロサイエンスに取り組んでおり、同社 ニールセン ニューロ ディレクター 藤本高志氏は、「競合の中では歴史的にニューロサイエンスに一番長く取り組んでいるという自負がある。博士号をもっている約20人が調査・研究を主導し、グローバルで標準化されたプロセスで行っているため、世界的な知見を集約できている。これまで全世界で12000以上のプロジェクトを実施しており、圧倒的なボリュームでやっている点が強みだ」と語った。
なぜ、同社がマーケットリサーチにニューロサイエンスを利用するのかについて、ニューロサイエンス ディレクター 辻本悟史氏(博士)は、「人の脳は持っている知識を使って知らない間に動き、意思決定を行っている。そのため、なぜそれを選択したのかという理由を説明できない。従来は消費者が考えて意思決定していると思い、消費者を説得して買ってもらおうとしていたが、消費者は知らない間に意思決定し、後付けで選択した理由を考えているケースが非常に多いため、いかに感情関与を高めるかを、広告やパッケージデザイン、ブランド向上などで考えていく必要がある」と説明した。
同社では、ニューロサイエンスを脳波と視線(どこを見ているか)で計測している。中心になるのが脳波で、脳に取り付けた32チャンネルのセンサーで毎秒500回の速さで脳の活動を記録。それを分析することで、注目(注目度)、感情関与(近づきたいか、遠ざかりたいか)、記憶(記憶に残るか)の3つの指標で表現する。
そして、この3つの指標から10段階の総合効果を算出する。総合効果は秒単位で算出でき、TVCMのどのシーンの効果が高く、そのシーンが効果が低いかを判別でき、編集による改善の参考にできる。
また、ブランドとキーメッセージがどれだけ伝達していたかという共鳴度も重要で、注目度は高いが、見終わったあと、結局なんのCMだったのかわからなかったということもよく起きるという。
では、総合効果の数字の高さが実際の売上に結びつくかについて辻本氏は、「非常にクリアに相関する。表情が9%、アンケートが24%、発汗、心拍、呼吸などのバイオメトリクスが27%で、脳波は62%と他に比べて優れている」と語った。
実際の活用では、A/Bテスト、できあがった広告ビデオなどで、脳波の総合指数の低いところを編集などで改善する、ビデオの短縮版を作る際に、指数の高い部分を利用するなどの用途があるという。
価格は、テレビ1素材で218万円、静止画の場合は180万円程度。
ダイドードリンコでも、カロリーリミットという飲料のボトルの形状を変更するにあたり、ニールセンのニューロサイエンスの調査を利用。ただ、ダイドードリンコでは複数のボトルからどれが最適かを選択するためではなく、最終決定されたボトルの効果を確認するために利用したという。
機能性食品の場合、機能が上がればおいしさが損なわれるという印象があるため、おいしそうと思ってもらえるようリニューアルを実施。ボトルを目で見たとき、触ったときに人にやさしいという印象を与えられかを確認したという。
実際には被験者24名に対して、見たとき、握ったとき、持ち上げたときのそれぞれで脳波を測定。サンプル数の24は少ないように感じるが、これまでの経験から24が最適で、それ以上増やすとバラツキが大きくなるという。また、調査は東京近郊の被験者で行われるが、他国では複数地域でやっているケースもあるが、日本の場合、場所に紐づいてものでなければ、東京近郊だけで調査してもほとんど結果は変わらないという。
ダイドードリンコでは、ボトルを変更することで、売上が前ボトルに比べ1.5倍になったという。同社では、ボトルの形状を変更したことにより、継続購買につながった点が売上増につながったと分析している。
藤本氏はニューロサイエンスについて、「毎年50くらいの素材を扱っており、アンケートどおりやっても売上があがらないという悩みを抱えている企業は多いので、年々増えている。クライアントさんには、知見を貯める、クリテイティブの質を均一化していくこと価値を感じてもらっている」と語った。