日本マイクロソフトは、2020年1月15日から17日にかけて東京ビッグサイトにて開催された「第12回 オートモーティブテクノロジー展(オートモーティブワールド2020)」に、パートナー各社とともに出展したほか、併せて自社の自動車分野に向けた取り組みについての説明会を開催した。
マイクロソフトが見る自動車業界の変化とは
説明会に登壇したMicrosoftのAutomotive Industry,General Managerを務めるサンジェイ・ラヴィ氏は、「今後、新車は100%インターネットに接続する時代が到来するし、自動運転も本格化してくる。ライドシェアも発達していき、それらを支えるクルマとしては電気自動車(EV)が伸びていく」と、いわゆるCASE(ACEs)について説明。「そうした時代に向けて、より安全でより持続可能な産業を作っていかないといけない。また、ユーザーに対しては、生産性の高いものであると同時にエンターテインメントであるものを提供する場所としての機能を提供する必要がでてくる」との見解を披露した。
それは、単なる高品質なクルマを作る、ということに限らないことを意味する。同氏は、「CASEがもたらす新しい世界においてクルマのエコシステムは大きく進化し、多くの新規プレイヤーが参入してくる。そして、彼らが自動車産業をモビリティ産業への変化をもたらす」ともしており、それにより単なるクルマだけでなく、スマートシティ、スマートインフラ、スマートパーキングなど、新たなビジネスモデルの構築につながっていくいう流れが生まれてくることを強調。こうした動きに対応していくためには素早くイノベーションを起こして、それを効果的に実証していく必要があるとした。
「これを実現するためにテクノロジーが重要な役割を持つことになる。企業がデジタル化していく中で、新たなソフトウェア基盤の構築が求められるようになる。それを実現するためにはハイパースケールのグローバルクラウドが重要な意味をもるようになる。また、多くのクルマがインテリジェントを有し、外部のクラウドを介さずに内部だけでさまざまな処理を高速で実行する"インテリジェントエッジ"となることが求められる。マイクロソフトとしては、この2つの側面に対し、パートナーと協力し、全体でソリューションを構築し、業界のサポートを要件を満たす形で提供していく」と、1社単独ではなく、エコシステムとしてクルマの進化を支えていくとした。
自動車分野での成長に向けた3つの戦略
マイクロソフトとしての自動車分野に向けた戦略は大きく3つ。1つ目は「自社でモビリティサービス自身は行わない」ということ。同氏は「クルマメーカーと競合しないことは重要」と説明する。
2つ目が「高度なAI能力を提供する」ということ。「クルマが生み出すデータそのものはクルマメーカーのものであり、我々は決してそれを自社の物として保有しない。収益化はなおさらしない。ビジネスモデルの対立が生じることはしたくない」と同氏は、その意図を説明する。そして3つ目が「未来のクルマで勝つためには、ブランド体験の拡大が重要になってくる。我々は、高度な能力を構築する能力を有しているが、それをクルマメーカーが勝つために提供していく。マイクロソフトというロゴをクルマの中で見ることは基本的にない。しかし、クルマメーカーが提供するAIやコグニティブサービスのバックボーンとなる機能を提供し、それをクルマメーカーが自社のブランド体験の価値向上として活用してもらうことを目指している」と、あくまで縁の下の力持ち的なポジションとしてのビジネス展開を図っていくことを示していた。
パートナーとしてルネサスが出展
実際に、同社ブースの展示のほとんどはパートナーたちによるものであった。その多くがソフトウェアやITのメーカーであったが、ハードウェアメーカーとしてルネサス エレクトロニクスが出展をしていた。
この数年、ルネサスは自社開催のカンファレンスを除くと、こうした対外的なイベントへの出展はほぼなくなっていた状況を鑑みると、小さいスペースながら、いろいろな意味でインパクトのあることである。
行っていたデモはR-Car H3を用いたOTAのデモ。R-Car H3スタータキットを用いて、R-Car H3上でハイパーバイザを走らせ、その上で動くLinux上でAzure IoT Edgeを活用して、Iot Hubと連携させることでOTAができることを示すものとなっていた。スタータキット上でAzureのプロビジョビングや技術評価、アプリ開発、認証セキュリティ技術の連携などが可能背あることを示すものだとしていた。