2020年1月15日~17日にかけて東京ビッグサイトにて開催された「第12回 オートモーティブテクノロジー展(オートモーティブワールド2020)」において、ロームは、世界一と自負する自社技術シリーズとしておなじみの「ローム、Nanoってる」の第3弾「Nano Cap LDO」を応用したすべての負荷容量に対応可能なオペアンプの紹介などを行っていた。

Nano Cap LDOそのものは、新規開発のLDO回路アーキテクチャを採用することで、LDOレギュレーターの出力コンデンサを使用せずに特性維持を可能としたもの。これを今回はオペアンプに応用してみたところ、すべての出力負荷領域で位相余裕が0°以上となることを確認。これにより、どのような負荷容量に対しても安定した動作が可能になるため、もしオペアンプが発振しても、気にせずに利用することが可能になるという。すでに「BD77501G-TR」という製品型番も決定済みで、同社では2020年夏にもサンプル品の提供を開始する予定であるとしている。

発熱分散機能を内蔵したLEDドライバ

また、量産展開間近の製品としては熱分散機能を内蔵したLEDドライバ「BD18337EFV-M/18347EFV-M」の紹介も行われていた。

これは4ch対応のLEDドライバだが、それぞれ個別にPWM調光が可能な製品。外付け抵抗と組み合わせることで、本来ICにかかる電力を分散させることができ、これによりICへのダメージを軽減させることを可能にしたというもの。アジア圏でのニーズが期待されているが、それ以外にもさまざまな利用が考えられるという。

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    熱分散機能を内蔵したLEDドライバ「BD18337EFV-M/18347EFV-M」のデモ基板

さらに、同社子会社のラピスセミコンダクタが開発を進めている車載対応の音声合成LSI「ML2253x/2212xシリーズ」の紹介なども行われていた。

最大の特徴は、九州工業大学の佐藤寧 教授と共同で開発した高音質音声圧縮技術「HQ-ADPCM」を採用しているということ。これにより、手軽にいろいろな音を合成して出せるようになり、従来、速度に応じて個別に作っていた疑似エンジン音を、速度に応じて個別に作ることなく、フレキシブルな再生を行うことが可能になるとする。

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  • 車載対応の音声合成LSI「2212xシリーズ」のデモの様子と、その隣で紹介されていたAWEC-Q100 グレード2に対応した1.2W車載用モノラルスピーカーアンプシリーズのデモの様子

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ちなみに、この車速情報に応じた疑似エンジン音の再生機能はML2212xシリーズのみ対応で、こちらは2020年夏ころのサンプル出荷、同12月ころの量産を予定。機能簡略版のML2253xシリーズは2020年春ころのサンプル出荷、同7月ころの量産を予定しているという。

実際の音声合成LSI「2212xシリーズ」のデモの様子

SiCパワーデバイスを搭載したインホイールモーター

このほか、同社が推進してきたSiCパワーデバイスを用いた事例として、東京大学の藤本研究室、ブリヂストン、日本精工、東洋電機製造と共同で進めている道路からインホイールモーターに直接、走行中に給電できる「第3世代 走行中ワイヤレス給電インホイールモーター」のデモ機が展示されていたほか、SiC MOSFETなどの採用事例が複数展示されていた。

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  • ロームとしては初公開となったSiC搭載インホイールモーター

同社のSiCは現在、第4世代品が開発されており、ウェハサイズなどは非公開であるものの、近い将来、製品投入を予定しているという。

なお、同展示会の開催タイミングで、STマイクロエレクトロニクスがローム傘下のSiCrystalよりSiCウェハの供給を受ける契約が締結されたことがアナウンスされており、SiCrystalは今後数年間にわたってSTへの150mm(6インチ)SiCウェハを供給していくこととなる。

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  • ロームブースに展示されていた第3世代SiC MOSFETと第2世代SiC ショットキーバリアダイオード