lead=半導体およびディスプレイの基板自動搬送システムメーカーであるローツェは1月22日、同社の韓国子会社「RORZE SYSTEMS CORPORATION」が、Samsung Electronicsのディスプレイ製造子会社Samsung Displayから318億ウォン(約30億円)相当のディスプレイ製造装置を受注したと発表した。
半導体およびディスプレイの基板自動搬送システムメーカーであるローツェは1月22日、同社の韓国子会社「RORZE SYSTEMS CORPORATION」が、Samsung Electronicsのディスプレイ製造子会社Samsung Displayから318億ウォン(約30億円)相当のディスプレイ製造装置を受注したと発表した。
すでに年初に28億円分の受注をしているが、それに続く短期間での追加受注であり、受注規模はこれで合計58億円規模となる。なお、今回受注したディスプレイ製造装置の種類、内訳などの詳細については公表できないとしている。韓国子会社において受注した製品の売り上げは韓国子会社の2020年12月期の売上高に計上され、ローツェ本社の2021年2月期の連結売上高に含まれる見込みである。
Samsungが進めるQD-OLEDの量産ライン整備
ローツェの2020年2月期第3四半期決算説明資料によると、Samsung Displayは、忠清南道牙山(アサン)市湯井(タンジョン)のディスプレイ量産工場(図1)内で今後5年間で13兆ウォン(1兆3000億円)規模の新規設備投資を行い、次世代QD-OLED(量子ドット有機EL)ディスプレイパネルの量産ライン設置の準備をしているという。
英国の市場動向調査会社IHS Markitのディスプレイ産業設備投資調査担当ディレクターであるCharles Annis氏は、「Samsung Displayは、昨年12月半ばからQD-OLED製造ライン向けの製造装置選定を始めており、順次発注が始まっている。まだ不明確なところがあるが、早ければ6~7月には装置搬入が始まり、2021年上半期には生産を始める見込みである」と述べている。Samsungの特殊仕様と短納期の要求にこたえるには現地生産が有利のようである。
今年年初にラスベガスで開催されたCESでSamsungはQD-OLED試作品を展示することが期待されていたが、限られた人たちへのプライベート展示にとどめた。QD-OLEDの色再現性は素晴らしいが、輝度やコントラストなどに改善の余地があるようで、これらの動向を含める形でIHSでは1月30~31日に東京で開催する「ディスプレイ産業フォーラム」にて同社の韓国駐在アナリストが最新情報を報告するとしている。
ローツェ、韓国に新工場を完成、第2棟の建設も開始
ローツェは、韓国での既存工場が手狭になったため、自動搬送システムの増産に向けた体制整備のために京畿道龍仁市に建設していた新工場が完成し、2019年11月より使用を開始した。
また、さらなる増産の必要性が生じたことから隣接地に第2棟の建設も進めており、2020年8月に完成する予定であるという。SamsungのQD-OLED量産ライン整備は緒に就いたばかりで今後数年にわたり設備投資が続行される予定なので、ローツェの韓国での受注も今後段階的に増加することが期待されている。
半導体向け装置が好調で通期業績予測を上方修正
こうした勢いを背景に、同社の2020年2月期第3四半期の売上高は前年同期比8.3%増、営業利益も同42.7%%増と好調だったため、このほど通期の売上高も期初予想から26億1600万円増の363億6300万円、営業利益も同16億円増の76億6800万円へと上方修正を行った。
上述のように、今回のSamsung Displayからの受注分は、この業績予想には含まれていない。実は、今回のけん引役は半導体向けで、台湾ファウンドリ向けウェハソータ、大手メモリメーカー向け窒素パージ対応ウェハストッカ、半導体製造装置メーカー向けEFEM(Equipment Front End Module)など高付加価値の主力システムの販売が好調だったという。これに対して、 FPD向けは、2019年に大型投資がなかったこともあり低調となっており、2020年以降に進むSamsung Displayの大型投資に期待がかかる。
上海にクリーンルーム付きオフィスを設置
なお、ローツェでは今後、中国の半導体産業およびディスプレイ産業の成長が期待できるとしており、上海オフィスの移転による拡充を決定。2020年1月10日に開所式を執り行ったという。新オフィスにはクリーンルームが併設され、中国顧客に対するサービス体制の強化を図っていくとしており、国をあげてローカルソーシングを推進する韓国、中国の顧客とさらなる密接な関係性を構築するための体制が整いつつあると言えるだろう。