Wireless City Planning(WCP)とソフトバンクは1月28日、大成建設と協力し、総務省の「多数の端末からの同時接続要求を処理可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討の請負」において、第5世代移動通信システム(5G)を利用してトンネル工事現場における作業員の安全管理を目的とする「i-Construction」の実現に向けた実証実験を、北海道余市郡で建設中の北海道新幹線後志トンネル(落合)他工事で2019年12月に実施したと発表した。
同実験でWCPは、ソフトバンクが開発した「おでかけ5G」(高い通信品質のサービスを局地的に提供できるという可搬型5G設備)を工事現場に設置して5Gネットワークを構築し、センサーによるトンネル工事現場のデータ収集と建設機械の遠隔操作に関する実証実験を行ったとのこと。
同実験の要点として3社は、1)ガスセンサーや環境センサー、ウエアラブルセンサーによるトンネル工事現場の安全監視、2)災害時の初期安全確認を想定した建設機械の遠隔操作、3)多様な通信要件を統合するスライシング機能の確認の3点を挙げる。
トンネル工事現場の安全監視としては、ガスセンサーや環境センサー、ウエアラブルセンサーを使用し、トンネル工事現場で発生する危険性の高い毒性ガスや可燃性ガスのデータ収集、労働環境の指標となる温度や二酸化炭素などをリアルタイムに監視して、危険な値が検出された際には作業員へアラートを送る仕組みの検証を行ったという。
これにより、トンネル工事現場の環境を外部からモニタリングできると共に、危険時にはトンネル内の作業員に通知することで、迅速な避難誘導が可能になることが期待できるとのこと。
建設機械の遠隔操作では、カナモトが開発した遠隔制御装置である「カナロボ」を搭載した油圧ショベル及びクローラダンプにおでかけ5Gの端末を搭載し、トンネル外に設けた操作室から建設機械を遠隔操作できる環境を構築したという。
5Gの大容量通信とMECサーバの利用により、おでかけ5Gの設置場所から約1400mの地点で、操作室からの建設機械の遠隔操作及び、4台のHD画質カメラを搭載した建設機械から操作室への映像伝送が問題なく行えることを確認したとのこと。 また、建設機械にガスセンサーを設置し、トンネル内の環境を確認できたとしている。
これにより、従来は人手で災害発生時の安全確認を行っていたが、初期の安全確認を建設機械を通して行えるようになると期待できるとのこと。
スライシング機能の確認については、ガスセンサーや環境センサーなどのIoTデバイスを多数設置したトンネル工事現場で、災害発生時の安全確認として大容量通信を必要とする建設機械の遠隔操作を行うことで、無線通信の容量が逼迫した場合を想定し、スライシングによる優先制御機能の確認を行ったという。
これにより、通信容量の逼迫した環境下で、ウエアラブルセンサーやガスセンサーによるトンネル工事現場の安全監視システムの維持と、建設機械の遠隔操作を問題なく行えると期待できるとしている。