広いラボの中の各所に設置されたさまざまな分析装置。これらの装置の状況を即座にインターネットを介さずに把握できるソフトウェア「Agilent CrossLab Smart Alerts」をアジレント・テクノロジーが年内にも国内顧客向けに提供する。

Smart Alertsは2019年春にAgilent Technologiesが米国にて提供を開始したサブスクリプションモデルのソフトウェアで、これまでのカレンダーや表計算ソフトに頼った消耗品交換時期の確認やメンテナンス作業を、実データに基づいて適切なタイミングで行うことを可能とするもの。2020年1月時点では同社の「Agilent 7890/8860/8890 GCシステム」、「Intuvo 9000 GCシステム」および対応したシングル四重極GC/MSシステム、ならびに「Agilent 1260 Infinity I/II LCシステム」、「Agilent 1290 Infinity LCシステム」などが対応しており、今後も順次対応装置を増やしていく計画であり、直近ではICP-OESが対応する予定だという。

  • Smart Alerts

    Smart Alertsの概要 (資料提供:アジレント)

Agilent TechnologiesのVice President, Marketing, Service and Support Divisionを務めるKen Suzuki氏は、「ラボを有する顧客の多くが分析装置をインターネットに接続させたくない一方でメンテナンス負担を軽減したい、という思いを抱いていた。Smart Alertsはこうした課題を解決するために開発されたもので、同じワークステーションに接続されているすべての対応装置のステータスを見ることができるソフト。ダウンロードからインストールして立ち上げるまで10分もあれば完了するほど簡単」であると手軽にスタートできる点を強調する。また、その利用費用も接続する装置1台ごとに1000円を予定しているという。

  • Ken Suzuki

    Agilent TechnologiesのVice President, Marketing, Service and Support Divisionを務めるKen Suzuki氏

「1台あたり月額1000円で、しかもいつでも解約が可能なサブスクリプションモデルなので、手軽に使ってもらえる。そして使い始めた瞬間から価値が生まれてくる。接続されたすべての機器の稼働状況などのステータスを一気に確認できるほか、例えばランプなどを含む消耗品が設定したしきい値よりも消耗された場合、ラボ内の担当者に社内のメールサーバ経由で送ることも、転送先をアジレントや代理店にすることもでき、それにより消耗品に対するリードタイムの短縮が可能になるほか、装置が何らかの理由で停止した際に、それをアラートメールとして知らせる、といったことも可能だ」と、同氏はラボ内のデジタル化が一気に進むメリットを挙げる。

また、これまで同社が培ってきたノウハウやテストをベースとした各装置に対するメンテナンス頻度などに関する用途に応じたセッティングがプリセットされており、ユーザーは利用時に用途に応じてそれを選択しておけば、余分な手を煩わせることなくメンテナンスを効率化することができるようになる(細かく設定することももちろん可能)。

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    Smart Alertsの主なターゲットユーザーと機器メンテナンスの概要 (資料提供:アジレント)

主なターゲットユーザーは、「サンプルが多い」、「複雑な勤務シフト」、「複雑なサンプル」、「取り扱いに注意を要するLC溶媒」といった条件にマッチするラボだとしており、環境分析や食品、エネルギー、医薬品の品質検査などがメインになるのではないかとしている。

また同社はAgilent以外の装置を含めたすべての装置のモニタリングを可能とする「CrossLab Connect」というソリューションも提供している。こちらはインターネットを介するため、エンタープライズレベルのユーザー向けとなるという。Smart Alertsからのアップグレードも可能とのことで、同氏は「Smart Alertsはエントリーレベルのデジタルプラットフォームという位置づけとなる。インターネットにつなげなくても、すべての接続機器の状態を把握するためにすぐに使えるし、メールでステータスを送ることもできる」と2つのソリューションのポジションを説明する。

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    Smart AlertsとCrossLab Connectの関係性 (資料提供:アジレント)

「Smart Alertsを活用してもらうことで、2020年を日本のラボのデジタル元年としたい」と同氏は力を込めて語る。こうしたデジタル化に向けた支援は直接的な装置の状況把握だけに留まらない。同社はユーザー同士、ならびに同社のエキスパートがさまざまな情報を交換する無料のコミュニティサイト「Agilent Community」を運営。ユーザーの困っていることに対して、Agilentの各製品ごとのエキスパートがリアルタイムで回答したり、ユーザー同士が情報を交換したりといったやり取りが行われており、ユーザーがコンタクトセンターなどを利用して時間を浪費せずとも、簡単な問題であれば自分でそれを解決できる環境の整備も進めている。

  • Agilent Community

    Agilent Communityの概要 (資料提供:アジレント)

なお、日本でのSmart Alertsの提供開始時期については、2020年内には提供できるようになる計画としており、具体的なスケジュールは明らかにされていない。これは、日本法人の担当チームがハンドリングなどについて学ぶ時間が必要であるためで、まずはアーリーアダプタに先行導入してもらい、そこでノウハウを積み重ね、その後に本格展開ということになりそうとのことである。