半導体ドライエッチング装置大手の米Lam Researchが2019年秋、韓国・京畿道庁との間で取り交わした京畿道への半導体製造装置の研究開発センター設立に向けた覚書の実現に向け、2020年3月にも具体的な建設に着手する方向で調整を進めているという。
韓国半導体製造装置業界関係者によるもので、新設される研究開発センターは「Lam Research Korea Technology Center (KTC)」と命名され、第1期工事として5000万ドルが投じられし、2021年前半の完成を目指すとしている。また、Lam Researchと京畿道庁はKTCが300名を超える研究開発要員を雇用することでも同意しているという。
Lam Researchは半導体製造装置の製造拠点を世界4か所に有しており、そのうちの1つが韓国京畿道内に設置されたLam Research Manufacturing Koreaである。KTCが立ち上がれば、研究開発から装置製造まで一貫して韓国内で行えるようになり、韓国内や周辺国の同社顧客との密接な研究開発に向けた協業が可能となるほか、サービス体制も強化できるようになるとLam Researchでは説明している。
また京畿道知事は、米Applied Materials(AMAT)にも同道への企業誘致を働き掛けているとのことで、京畿道庁関係者によると、京畿道にはSamsung Electronicsの半導体製造拠点である華城(ファソン)工場、平澤(ファソン)工場、SK Hynixの本社工場、龍仁(ヨンイン)工場群(2022年着工予定)があり、これにLam Researchなどの製造装置の開発・製造拠点を加えることで、京畿道を世界トップクラスの半導体クラスターにすることを目指していくとしている。
なお、韓国政府は2020年、素材・部品・装備(製造装置・設備)分野に2兆1000億ウォンの予算を投入し、(海外企業の韓国内での生産を含む)国産化を促進する計画。すでに2019年末から2020年初頭にかけて米Dupont(EUVレジスト開発・製造)、米Lion Semiconductor(パワー半導体研究センター)、東ソー(石英ガラス製造)などといった複数の企業から韓国への進出が発表されている。
韓国政府の補助金や税制優遇、政府関係者および地方自治体トップ自身による海外企業への誘致活動なども行われており、韓国メディアでは、こうした取り組みを背景に、「日本は寝た子(韓国)を起こした」との韓国政府関係者のコメントを紹介するなどしている。今後、こうした動きがさらに活発化し、より海外企業の韓国投資が進めば、国産化への取り組みと相まって「脱日本依存」のグローバルエコシステムが構築される可能性が高まっていくことも考えられ、そうなれば自ずと日本の製造装置・材料業界のグローバルでのポジションも低下しかねないことが危惧される。