山梨県小菅村、北都留森林組合、boonboon、さとゆめ、東日本電信電話(NTT東日本)の5者は1月22日、豊富な森林資源を持つという小菅村山間部にIoTを実装し、林業に関する課題解決及び「Smart Village」の実現に向けた実証実験を2020年2月中旬から9月までの予定で実施すると発表した。

  • LPWAネットワークの構築イメージ

林業の共通課題という林業従事者の労働災害抑止やシカなどの獣害対策に対し、山間部を効率的にカバレッジできるという高出力の独自LPWAを使用し、従事者が緊急時の救助要請を可能にする仕組みや害獣捕獲時の通知機能を提供することで、より安全で生産性の高い林業経営の実現を目指すとしている。

具体的には、森林面積が95%という小菅村をフィールドに、LPWAの規格において最大送信出力である250mWの機器で長距離通信を可能にすること、及び中継機のメッシュマルチホップ機能によって広範囲へのエリア拡張を実現することで、従来無線の届きにくかった山間部のネットワーク環境を構築するという。

このネットワークでセンサーやカメラなどのIoT技術を使用することで、安心安全で効率的な林業経営を目指すとのこと。

まず林業従事者の労働災害抑止として、双方向通信可能な子機や専用アプリの利用により、SOS発信、位置情報把握、チャットコミュニケーションの3つの仕組みを提供する。

SOS発信は、伐木作業中の倒木事故などで負傷した際に、子機本体のボタンを押すことでSOS信号を発信可能とするもの。

また、子機に内蔵した加速度センサーにより転落など急な衝撃を基にトラブルを検知し、SOS信号を自動発信でき、緊急事態の早期発見・早期対応が可能になるとしている。

位置情報把握では、子機内臓のGPSで補足した作業者の位置情報を地図上に表示することで、救助要請者の居場所の把握が可能になり、迅速かつ効率的な救助を実現するとのこと。

チャットコミュニケーションは、専用アプリを通じてテキストや位置情報をチャットで送受信することで、これまで携帯電話の電波が届く所まで移動して行っていた業務連絡などの作業効率化を図ることができるという。

これらにより、緊急時の現場から事務所への救助要請や、業務を円滑化するコミュニケーションが可能になるとしている。

シカなどの獣害対策では、子機に内蔵したセンサーが罠の作動を検知した際、予め指定した宛先に捕獲通知をし、捕獲の早期発見・駆け付けや巡回ルートの最適化が可能になるという。

加えて、巡回が困難な場所にはカメラを設置し、捕獲有無や害獣種別・大きさなどを画像で確認することで、巡回稼働の効率化を図るとのこと。

  • 今後の展開のイメージ

今後は、労働災害抑止や獣害対策のスマート化を契機に、多様なパートナーと共に、林業業界の他の課題へのICT実装やデジタルトランスフォーメンション化の検討を進めていくという。

また、今回の実証実験で整備したLPWAのネットワークをSmart Villageの基盤とし、他の産業への応用を通じた地域の活性化や地域経済の循環を目指すとしている。