東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、2019年12月のIT・ソフトウエア業界のM&A件数は11件で、12月としては、2008年以降の12年間で2018年の15件、2013年の13件に次ぐ3番目(2015年、2017年と同数)の多さとなった。M&Aを活用して人手不足を補ったり、規模拡大を目指したりする動きは続いている。
2018年1月以降の月別では最も多かった2018年9月(21件)の半分程度にとどまり、2年間の平均値(11.2件)に近い水準となった。
2019年11月が前月(2019年10月)の2倍以上の14件と大きく伸びたことから12月の件数が伸び悩んだものと思われる。
一方、金額は約39億円で、2008年以降の12年間では上位から6番目となった。金額上位3件が10億円台と低く、半数近い5件が金額非公表だったことから、金額が抑えられた。
金額トップはEストアーの13億円
12月のM&Aで金額が最も多かったのは、Eストアーがヤフー子会社でEC(電子商取引)サイト構築ソフトウエアを開発するコマースニジュウイチ(東京都港区)の全株式を取得し子会社化を決めた案件で、取引金額は約13億円。
Eストアーはコマースニジュウイチのパッケージ型インテグレーションECシステムを取り込むことで、大企業から中小企業まで多様なニーズに対応したECシステムの品ぞろえを強化する。
金額の2番目はミンカブ・ジ・インフォノイドが、不動産ファンドに関する情報サイトの運営などを手がけるProp Tech plus(東京都港区)の株式66.73%を取得し子会社化することを決めた案件で、取引金額は約12億9000万円。
Prop Tech plus は不動産投資信託(REIT)など不動産ファンドに特化した個人投資家向け情報サイト「JAPAN REIT.COM」を運営するほか、不動産ファンド向けシステム開発・Web構築などのソリューション事業を展開している。
ミンカブ・ジ・インフォノイドは国内株式を中心に外国株式、外国為替、商品先物、指数、仮想通貨、保険など様々な金融情報を提供している。約17兆円と時価総額で東証2部の倍以上の規模を持つREIT市場で、有力な情報、システム会社を傘下に取り込むことで、新たな安定収益源の獲得を目指す。
金額3番目はGA technologiesが高級賃貸サービスサイトを運営するモダンスタンダード(東京都港区)の株式67%を取得し子会社化した案件。GA technologiesは2020年1月15日に残る株式を株式交換で取得し、完全子会社化する。株式取得価額は10億円。
モダンスタンダードは7万人の会員を持つ高級賃貸サービスサイト「Modern Standard」を運営し、富裕層や高所得者層を中心にユーザーを獲得している。
GA technologiesは中古不動産の売買を中心にリノベーションや不動産投資などのサービスを提供する自社の不動産テック総合ブランド「RENOSY」を展開している。モダンスタンダードを傘下に取り込むことで、販売網の相互活用などを通じて両社のサービス提供機会を拡大する。
12月はこのほかに金額を公表した案件が3件あったが、いずれも少額だった。