2020年の年頭にあたり、パナソニックの社長を務める津賀一宏氏は、以下の年頭所感(抜粋)を発表した。

低収益体質からの脱却と、ビジネスモデルの変革を推進

昨年を振り返ると、大きな災害が相次いだ年でした。被災された全ての皆様に心よりお 見舞い申し上げます。当社でも、台風19号の被害を受けた郡山事業場の完全復旧に 向け作業を進めております。

経営環境の面でも、中国市況、米中貿易摩擦の影響等で、今なお厳しい状況が続いて います。社員全員で何とかこの正念場を乗り切っていかねばならないと考えております。 一方で昨年4月には7カンパニー体制をスタートさせ、CNA社、US社という地域カンパ ニーを新たに設置しました。とりわけ中国では、日本中心の発想ではなしえなかった、 様々な取り組みがスタートしています。これまでの蓄積に、中国流のスピードやコスト、イ ノベーションやビジネスモデルといった要素を掛け合わせ、長期的視点でパナソニックの 新たな強みをつくりこんでいきたいと考えています。

今年、我々がやるべきことは、現在の中期を経て、発展に向けた健全なスタートを切るこ とができるよう、着実に打つべき手を打っていくことに尽きます。そのためにはまず、「低 収益体質からの脱却」という課題にしっかりと向き合わなければならないと考えます。今 や、くらしの中に家電があることそのものが「価値」として認められる時代ではありません。 しかし、我々の事業の多くは旧来の大量生産・大量販売という単純なビジネスモデルか ら変わることができていないのも事実です。それぞれの事業が提供すべき価値、ビジネス モデルを再定義し、自らの「勝ち方」をしっかりと見定め、その実現に向けて迅速に手を 打っていくことが不可欠です。

もう一つのキーワードは「くらしアップデート」です。現在、「くらしアップデート」の具現化に 向けた検討を進める中、最も重要なのは、ハードウェアやソフトウェアそのものの強化よ りも、「お客様がくらしの中で何に困っているのか」を起点に考えることです。 これまで100年間、我々が「くらし」に電化された「モノ」を提供することで培ってきた強み を元に、お役立ちをどのように進化させていくのか。それは AI や、IoT など進化を続ける 情報インフラを活用し、お客様のくらしを起点に「コト」から発想して、そこに「モノ」を連動 させ、様々な空間で最適な価値を提供する、そのための土台を構築するということに尽 きます。これにより「個々人のくらし」を絶えずより良いものにし続けることこそが、我々の 取り組むべき挑戦です。

今年は、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。これまで我々は、成 熟国家となった日本が世界に変革を促し、それをレガシーとして未来に継承する、その 国家事業を支援するという思いで、全社を挙げて様々な取り組みを進めてきました。事 業としての刈り取りはもちろんですが、この東京オリンピック・パラリンピックを一つの象徴 とし、我々自身も成熟事業から自らを変革することで、将来の発展に向けて、着実に歩みを進めていきたいと思います。