台湾TrendForceのDRAM市場調査部門であるDRAMeXchangeの分析によると、1X-nm DRAMプロセスの製造歩留まりが安定せず、供給が制限されているため、サーバー向けDRAMを筆頭に、2020年第1四半期のDRAM価格は上昇トレンドとなるという。
中でも、グラフィックスDRAMは、ほかのDRAM以上に需要の変化に敏感であることもあり、急激な価格上昇となる可能性があるという。具体的には、顧客が在庫積み増しによって需要を高めているため、2019年第1四半期のグラフィックスDRAMの契約価格は、前四半期比5%超と、すべてのアプリ別DRAMの中でももっとも高い上昇率になるとしている。
GPUとゲーム機のスペック向上で、大容量GDDR6の需要が高まる
2020年のDRAM市場全体の需要をみてみると、GDDR5からGDDR6への移行が急速に進行していくとDRAMeXchangeは指摘している。
グラフィックカード市場では、NVIDIAのグラフィックカードの出荷の大部分はRTXプラットフォームに基づいたものとなり、それらRTXカードのほとんどはGDDR6メモリを採用するものとなると見られるという。
またAMDも、GDDR5メモリを搭載した古いグラフィックスカードの在庫を積極的に吐き出している。同社は最新のGPUであるNAVIシリーズ向けDRAMをGDDR6に完全に切り替えた。
また、ゲーム機市場では、ソニーとMicrosoftはそれぞれPlayStation 4とXbox One XでそれぞれGDDR5に依存している。ただし、2020年後半にリリース予定の次世代コンソール(つまり、ソニーのPlayStation 5とMicrosoftのXbox Series X)にはGDDR6メモリが搭載される見込みとなっている。これらの次世代コンソールのメモリ搭載容量は、10GB以上とされており、これらの開発状況を考えると、2020年にグラフィックスDRAMの需要は供給を超えると予想されるという。
供給面では、グラフィックスDRAMは他のタイプのメモリと比較して、チップあたりの製造コストが最も高くなっている。したがって、グラフィックスDRAMは、DRAMの価格が全体的に下落していった2019年、DRAMサプライヤ各社に大きな営業損失をもたらたした。その結果、主要DRAMサプライヤ各社はDRAM製品の構成比率を調整し、グラフィックスDRAMにあてていたウェハ生産能力の一部を利益率がもっと高いほかのDRAM製品に移すことで、利益の維持を図る事態となっていた。DRAMeXchangeによると2019年末時点で、グラフィックスDRAMの出荷額は、業界全体のDRAM出荷額の6%未満にすぎないという。
供給を絞ったこと、ならびに需要側が在庫を積みます動きを見せ始めたことで、相場は安定し始めてきたが、半導体の製造には数ヶ月を要するため、需要の増加に即座に対応することができないこともあり、DRAMeXchangeでは2020年にグラフィックスDRAMの契約価格は急激に高くなる可能性があるとしている。
2020年のグラフィックスDRAMの供給量は前年比15%増の見込み
グラフィックスDRAM市場の主要なサプライヤはSamsung Electronics、SK Hynix、Micron Technologyの3社。Samsungが最大シェアを有しているほか、GDDR6製品の設計およびクライアントテストの進捗に関して一歩ぬきんでているため、誰の目にもマーケットリーダーであることは明らかである。SK HynixとMicronが2位争いしているわけだが、GDDR6については、MicronがSK Hynixよりも製品開発が進んでおり、まもなく次世代チップの量産段階に入る見込みであり、2020年にはMicronがSK Hynixとの距離を広げる可能性が高いとしている。
なおTrendForceは、グラフィックスDRAMの価格が回復すれば、主要DRAMサプライヤ各社ともにウェハ生産能力の一部をそちらに徐々に戻していく可能性があり、それによって2020年のグラフィックスDRAMのビット出荷数量は前年比15%増となる可能性があるとしている。