「2019国際ロボット展」(iREX2019)のデンソーウェーブブースでは、協働ロボット「COBOTTA」を利用したソリューションを見ることができた。中でも、大きな話題となっていたのは、書類の押印作業を自動化したシステム。日立キャピタル、日立システムズと共同開発したもので、2020年3月より月額サービスとして提供を開始する予定だという。
印鑑は近年、日本のIT化の遅れを象徴する制度として捉えられることが多い。筆者も請求書で捺印を要求されることがあるが、誰がどこで買った印鑑でも良いので、確かにセキュリティ的にはほぼ無意味。請求書をプリントアウトして、捺印して、スキャンしたPDFをメールで送るような作業は、どう考えても無駄だ。
印鑑を「廃止」するのではなく、ロボットで「自動化」する。それだけ聞くと「間違った方向に頑張ってしまった」感が満載で、だからネタとして広がったわけだが、日立キャピタルの担当者は「ネットでは『電子化を阻害するのか』という声が多かったが、我々もペーパーレス化は賛成」と、真意を説明する。
しかし、自社が電子化していても、取引先が紙ベースのままだと、紙を完全に廃止することはできない。最終的には社会がペーパーレスに辿り着くにしても、現在はまだその過渡期。無駄な作業とは分かってはいても、押印せざるを得ないのが現状だ。
今回出展したシステムのコンセプトは、サイバーのRPA(Robotic Process Automation)と、フィジカルのロボットを組み合わせれば、オフィスの様々な作業をもっと自動化できる、ということだった。先に紹介した定型書面の押印作業のほか、冊子型書類の電子化作業のデモも行われていた。
顧客に「オフィスの作業を自動化できますよ」と単に説明しても、なかなか使ってはもらえない。メリットを理解してもらうために、具体的な自動化の例としてまず実装したのが、押印作業と電子化作業だった。同社では実際にニーズを調査したそうで、それだけ、ペーパーレス化が進展していないということだろう。
またデンソーウェーブのブースでは、COBOTTAの三菱UFJ信託銀行への導入事例も紹介されていた。これは、プリンタへの給排紙を自動化したというもの。銀行用の特殊なプリンタのため、1枚1枚手差しでやるしかなく、従来、忙しいときには職員が付きっ切りだったという。この導入により、人手の時間を半分にできる見込みだ。
自動で給排紙できるプリンタを専用で開発してもらうと大きなコストがかかるが、これだと既存のプリンタにロボットを追加するだけなので、導入コストを抑えられる。このシステムは、今月より本格稼働しているそうだ。