台湾TrendForceの最新の調査によると、2019年第4四半期のファウンドリ市場は、ファウンドリ自身の在庫削減努力と予想を上回る季節的需要の増加により、前四半期比6%増となる見込みだという。
7nmプロセスが売り上げ拡大を牽引するTSMC
ファウンドリ市場で過半数を超すシェアを有するTSMCは、16nm、12nm、7nmプロセスによる半導体デバイス製造がフル稼働の状態となっている。特に7nmの売上比率が高まっているという。背景としては、同プロセスを率先して採用したAppleの最新世代スマートフォン(スマホ)であるiPhone 11シリーズの売り上げが予想を上回ったこと、AMDがウェハ投入量を維持していること、そしてMediaTekが同社初の5G SoCチップの注文を出したことなどが挙げられる。
またTSMCは、レガシープロセスによるIoTチップの出荷数も増やしており、その結果、同四半期の売上高は前年同期比8.6%増となるとTrendForceでは予測している。
市場2位のSamsung Electronicsは、5Gスマホ市場が2020年に成長することを踏まえ、ハイエンド4Gスマホ向けアプリケーションプロセッサの出荷数が減少していくとの予想に対し、7nm EUVプロセスによるQualcommの5G SoCを第4四半期中に出荷することで、補完を図ろうとしているほか、5Gのネットワークチップ、高解像度CMOSイメージセンサなどが売り上げに寄与した結果、同四半期の売上高は19.3%増となる見込みだという。
5Gの商用化に向けRF ICの需要が増加
5Gの商用展開に向けた動きが活発化していることを受け、シェア3位のGLOBALFOUNDRIESはRF ICの需要が増加しているという。また、テレコムおよび自動車用FD-SOIの製品群も拡大させることで、研究開発を止めたバルクシリコンの先端プロセスに対する需要減少を食い止めており、その結果、同四半期の売上高は同0.1%増と予想されている。
また、シェア4位のUMCも5G通信チップおよび組込メモリ市場の需要が増加したほか、スマホメーカーからのRF ICならびに有機EL(OLED)ドライバICの需要も増加。さらにコンピュータ分野でのPMICの需要も増加と、勢いを増しており、結果として売上高は同15.1%増になると予想されている。
そして5位SMICもCMOSイメージセンサ、光学指紋センサ、中国における顧客数の増加、通信アプリ向けPMICの安定需要などにより、フル稼働状態が続いているとのことで、同四半期の売上高は同6.8%増となると予想されている。
また、イスラエルに本拠を置き、日本にも製造ファブを持つ6位のTowerJazzも、5G向けRF ICおよびシリコンフォトニックチップの需要増によるRF SOI市場でのシェア拡大を図っているが、データセンター関連の需要減によるディスクリートの売り上げが減少。結果として、同四半期の売上高は同6.0%減となると予想されている。
7位の中Hua Hong(華虹半導体)は、中国内向けの組み込みメモリおよびパワー半導体市場が中心だが、現在はRF製品のラインアップの拡大も進めているという。しかし、稼働率は前年同期と比べて低下しており、その結果、売上高は同2.8%減となると予想されている。
なおTrendForceでは、クリスマスならびに年末商戦に向けた在庫の積み増し効果により、2019年第4四半期のファウンドリ業界全体の市場規模は従来予想を上回るとの見方を示している。しかし、米中貿易戦争ならびにエレクトロニクス市場の不安定さが続いていることから、先の見通しができないため、ファウンドリ各社は2020年第1四半期に、残っている在庫量に応じて在庫レベルの調整を図っていく可能性があるとTrendForceでは見ている。