半導体市場調査会社である台湾TrendForceは、米国を拠点とする多くのIC設計会社(ファブレス)が、2019年第3四半期の売上高を前年同期比で減らしており、その多くが長引く米中貿易戦争の影響によるものだという分析結果を公開した。中でも、Huaweiがエンティティリストから削除されていないことが大きな影響を及ぼしていると同社では指摘している。
TrendForceのシニアアナリストであるC.Y.Yao氏によると、米国最大のIC設計会社であるBroadcomは、同社の最大級の顧客の1社であるHuaweiがエンティティリストから除外されないために大きな影響を受けたという。Broadcomは3四半期連続で売り上げの減少に悩まされてきたが、特に第3四半期は前年同期比12.3%減という大きな減少率を記録した。
米中貿易戦争の影響が直撃した米国勢
2019年第3四半期のIC設計企業ランキング2位のQualcommもBroadcom同様、米中貿易戦争の犠牲になっているとYao氏は指摘している。
Huaweiは、自社製のチップセットを自社のスマートフォン(スマホ)と組み合わせることで販売台数を伸ばしており、相対的に他社のスマホの市場シェアが低下した結果、Qualcommのチップセットの販売にも影響が出た格好といえる。また、Qualcommはスマホ市場での5G需要がまだ生まれていないにも関わらず、台湾MediaTekと中国のモバイルチップセットメーカーUnisocからの攻勢に直面しており、その結果、Qualcommの同四半期の売上高は前年同期比22.3%とBroadcom以上のマイナス成長となった。これはトップ10社中、最大の下げ幅である。
3位のNVIDIAは、ゲーム用グラフィックスカードの在庫の調整を進めたことから、同四半期の業績を前年同期比9.5%減にとどめることができており、マイナス成長率を前2四半期比で抑えつつある。
7位にランクインするMarvellも、ストレージ分野で第1四半期に予想以上の需要があり、売り上げを伸ばすことに成功したが、第3四半期にはその勢いが弱くなってしまったほか、Huaweiがネットワークチップの主要顧客の1社であったことも影響した結果、同四半期の売上高は、同16.5%減となった。
IntelのCPU不足の隙を付いて成長するAMD
トップ10社に入る米国勢の中で、同四半期に業績を伸ばしたのは、AMDとXilinxの2社のみ。AMDは長引くIntelのCPU不足を尻目にCPUのシェアを拡大。同四半期の売上高を同9%とした。
また、Xilinxも同社がカバーするすべての産業領域で売り上げを伸ばすことに成功。同四半期は同11.7%増と2桁の成長を達成した。
同四半期に最大の成長を達成したのは台湾Realtekで、オーディオ、イーサネット、テレビ関連製品が伸びたことから、同30.5%増という伸びを達成した。
また、同じく台湾系のMediaTekの業績は、ドル換算だと同1.4%減となっているが、スマホ向け製品の販売好調に加え、家電市場での需要回復もあり、現地通貨換算では、同0.3%増とプラス成長になったという。
なお、TrendForceでは、ランキング上位3社がいずれも米国拠点の企業であり、業績が低迷していることから、2019年通年のIC設計市場はマイナス成長の傾向となっていると指摘している。ただし、そうした企業が、米中貿易戦争によって課せられた規制を避けるなど、方向転換ができるのであれば、サーバやスマホなどの市場回復のほか、5GやAIによる市場の盛り上がりなども期待できるため、2020年はプラス成長になるものとTrendForceでは予測している。