今年のテーマは「Transformation」
12月2日(現地時間)より、米Amazon Web Services(AWS)の年次イベント「AWS re:Invent」がスタートした。「AWS re:Invent 2019」はAWS最大のカンファレンスだ。最も大きな発表はCEOであるAndy Jassy氏から基調講演で行われるのだが、この基調講演は記事にするのが難しい。
というのも、3時間、時には3時間を超える長時間の基調講演において、Jassy氏がさまざまなトピックを詰め込んで話をするためだ。どの部分を取り出すかで、記事の内容は大きく様変わりする。
Jassy氏は、AWS re:Inventを新しいサービスの発表や販促向けのイベントとしては位置づけておらず、学習のためのイベントと位置づけている。そのためか、発表される内容は多岐にわたり、内容も新しいサービスの紹介から既存のサービスの復習までさまざまだ。基調講演をどうとらえるかで、記事の内容が様変わりしてしまうのはこのためだろう。
しかし、Andy Jassy氏がその年に最も主張したいテーマのようなものは、基調講演の初めに発表されることが多い。今年はそのメッセージが「Transformation」だった。
成功を収めているAWSのクライアント企業の多くがクラウドサービスを活用している。クラウドサービスの利点はこれまで繰り返し説明されてきたように、サービスを利用するにあたって初期費用がかからないこと、運用コストは利用料だけであること、スケーラビリティが高く必要に応じてすぐに性能を引き上げることができること、などだ。
こうした分野におけるAWSの優位性は2019年も優勢だ。例えば、IaaSにおけるシェアの半分ほどはAWSが占めている。2位以降のベンダーのシェアと比較すると、AWSがIaaSの分野においてきわめて強い影響力を持っていることがわかる。
クラウドサービスの分野は高い成長率が続いている。しかし、IT業務全体でクラウドを利用している時間は3%ほどと見積もられており、まだまだクラウドサービスの利用は進んでいない状況にあるというのがAndy Jassy氏の判断のようだ。こうした状況を加味し、よりクラウドサービスを活用するように変化していこうというメッセージが「Transformation」という言葉として示されたと見られる。
Andy Jassy氏からはクラウドサービスへのトランスフォームを進めるための基盤として、AWSが提供する各種サービスに加え、そのサービスにどのような強化が施されたのか、どのようなサービスが導入されたのかが次々に発表された。
これらの発表は別な記事で取り上げるが、本稿では、Andy Jassy氏が「IT業界におけるクラウドサービスの活用がまだ初期段階であり、活用が進んでいないと考えていること」「よりクラウドサービスを活用する状況にシフトできるようにサービスの強化や新しいサービスの追加を行っていく」、そうした姿勢を示したことに注目すべきと強調しておきたい。