地球温暖化対策を進めるための国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)が日本時間の2日午後、スペイン・マドリードで開幕した。会期は13日まで。パリ協定が来年から本格始動するために協定の実施ルールを最終的に決めるための議論をするが各国間交渉は難航も予想されている。国連のグテーレス事務総長は初日の全体会合や記者会見で温暖化の影響が深刻化する一方、温室効果ガスの削減が十分進まないことに強い危機感を表明した。

日本の環境省関係者らによると、会期中9日までは事務レベルの交渉が行われ10日からは閣僚級会合が始まる。この会合には日本の小泉進次郎環境相も出席する予定。事務レベル、閣僚級それぞれの会合では、パリ協定の実施ルールについて協定始動前の最終的な議論が行われる見通しだ。具体的には温室効果ガス削減量の一部を各国間で取引して全体的に削減量を減らすための仕組みづくりで議論し合意を目指す。しかし先進国や発展途上国を含めた各間間の交渉は各国の利害が微妙に異なることから難航する可能性もあるという。

国連のグテーレス事務総長はCOP25初日の全体会合で温暖化の現状に強い危機感を表明し、対策強化を強く訴えた。また、記者会見では「気候変動は長期的な問題ではない。今や世界的に危機に直面している」と強調する一方「温室効果ガスの排出は世界的に驚くべき速さで増加している。これまでの各国の排出削減の取り組みは全く不十分だ」などと各国に削減目標の引き上げを求めている。

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    2日から始まったCOP25の初日の様子。右から2番目は国連のグテーレス事務総長(COP25事務局提供)

代表的な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の排出量が中国に次いで多い米国はパリ協定からの離脱を11月に正式に表明しているが、気候変動枠組み条約の締約国会議には参加しており、米国政府はCOP25にも代表団を派遣している。パリ協定は発展途上国を含むすべての国が削減目標を設定して対策を進めることを前提としているため、米国政府の姿勢が排出削減に向けたCOP25での機運に影響することも懸念されている。米国はオバマ前大統領時代に「2025年までの温室効果ガス排出量を2005年比で26~28%削減する」と表明していたが、トランプ大統領就任後この目標は棚上げされている。

COP25の会場は当初、チリで開かれる予定だったが、反政府運動が激しいことなどからスペインのマドリードに変更になった。COP25を前に国連環境計画(UNEP)や世界気象機関(WMO)は相次いで、温暖化は既に顕在化しており、将来「破壊的な影響」を受ける可能性がある、などと警告する報告書をまとめている。

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    COP25の会場となったIFEMA(国連気候変動枠組み条約のホームページより)

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