パナソニックは11月25日、ディープラーニング(深層学習)を活用した顔認証技術のAPI提供を開始すること、第1弾サービスとしてサイバーエージェントの連結子会社マッチングエージェントの趣味でつながるマッチングアプリ「タップル誕生」が採用することを発表した。
パナソニックの顔認証技術に関する研究は1992年に研究所内部でスタートし、その後、デジタルカメラやビデオカメラにおける顔検出から、監視カメラなどへと応用範囲を拡大してきた。その特徴は、大きく4つ。1つ目は特性の異なるディープラーニングを複数融合させることで、顔のあらゆるシーンをしっかりと捉え、認証度を向上させることを可能としている点。2つ目は、照明の強さや眼鏡、マスクなどの環境変化に応じた類似度計算による精度向上。3つ目は、精度を維持しながら、組込機器に求められる軽量化の実施。4つ目がマルチタスクで従来比で10倍以上の高速化の実現といったものがある。
パナソニック コネクティッドソリューションズ社 副社長 兼 イノベーションセンター所長の江坂忠晴氏は、「サービスとして提供するに当たっては、認識率の向上のみならず、ユーザインタフェース(UI)や操作性まで含めたシステムデザイン力や、フィジカルセキュリティなども求められるようになっており、トータルシステムでの提案が求められるようになっている」と顔認証を取り巻く状況を説明。すでに空港の入出国ゲートでの活用や、富士急ハイランド、ファミリーマート、コワーキングスペースなどで同社のソリューションは活用されており、そうしたノウハウの蓄積をもとにした提案が可能であることを強調した。
顔認証事業は4つのレイヤで提供
今回のAPI提供は、同社のB2B向けIoTサービス「μSockets」上のマイクロサービスの1つとして提供されるものだが、顔認証サービスとしては、従来型の顧客の要望に併せて作りこむ「システムソリューション」、顔認証の汎用普及モデルの提供を行う「モジュールパッケージ」、開発パートナーなどにSDKなどを提供する「ソフトウェア」、そして今回の「クラウドサービス」という4つのレイヤでビジネスを進めていくこととなる。
最下層に位置づけられたクラウドサービスの特徴は、導入しやすい価格と、逆光補正やノイズ除去などといった技術を活用することで実務に適用しやすいという2点。また、稼働環境のμSockets自身もAzure VNETでプラットフォーム全体を分離し、通信プロトコルの制限なども施すなどセキュリティを担保するほか、顔認証API自体も、同社のプログラム上でしか扱えない顔特徴量データ(バイナリデータ)のみとすることで、セキュアな環境を構築しているとする。
主なターゲット市場としては、製造、物流、流通、金融、エンターテインメント、移動(MaaS)、オフィス、オンラインビジネスとしているが、本人確認のサービスがある分野はすべて対象としていくとする。その展開方法としても、同社グループの販社がAPIを組み込んだ業務ソリューションを構築して展開していくほか、SIerやパートナーベンダのソリューションの組み込んでの提供、そして幅広い顧客にアプローチするためのダイレクトECサイトからの提供(2019年度中の開設予定)という3つの方向性で進めていくとする。また、併せて顔認証APIコミュニティを構築。専門の技術スタッフによる技術習得支援や開発支援などを実施していくほか、参加企業同士のコミュニケーションの活性化を図るプログラムも展開していく予定だとしている。
なお、月額サービス価格は登録人数あたり5円(税別)、ならびに認証回数1回あたり1円(同)としており、申し込み後の翌月度末までは最大100名、最大認証1000回のトライアルプログラムが適用されるとしている。
利用に当たっての申し込み方法は、同社担当営業まで連絡を行うか、μSockets Webサイトから問い合わせをしてもらいたいとしている。