木質バイオマスを原料に、再生可能エネルギーから調達した電気と水を使って、アミノ酸を75~99%の高効率で合成することに成功した、と九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の山内美穂教授らが発表した。反応効率はこれまでの報告の10倍以上という。アミノ酸の工業生産には大規模な設備が必要だが、再エネの活用で分散型・小規模の生産が可能になり、環境負荷を少なくすることが期待される。
山内教授らによると、アミノ酸の原料は木の端材などの木質バイオマスから抽出できる、α-ケト酸と呼ばれる化合物。電気化学的に水と反応させて水素化し、アミノ酸に変換する。これまでにアラニン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ロイシン、フェニルアラニン、チロシンという7種類のアミノ酸を効率よく合成できた。アスパラギン酸、ロイシン、フェニルアラニン、チロシンを電気的に合成したのは初めてという。
アミノ酸を連続合成するフロー型の反応装置も開発。陰極の電極には安全で安価な酸化チタンを使った。これまで、有毒な鉛や水銀、高価な白金の電極上でアミノ酸が合成された例はあったが、合成効率は非常に低かった。
生物を構成する重要な要素であるアミノ酸は、食品や飼料の添加物、医薬品原料など幅広い用途がある。その多くは発酵法で生産されているが、アミノ酸をつくる微生物の培養には時間を要し、分離・精製の工程も煩雑でコストがかかるという問題がある。
山内教授は「我々の報告が、石油化学をベースとする現在のプロセスから再生可能な電力と水を使った小規模で環境負荷の少ないプロセスへ転換するための足がかりになれば良い」と話している。
研究成果は10月31日、イギリスの王立化学会の専門誌「ケミカル・コミュニケーション」の電子版で公開された。
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