中国でDRAMおよびNAND型フラッシュメーカーや複数のLSI設計会社を傘下に抱える国策半導体ハイテク投資グループである「清華紫光集団」(Tsinghua Uni Group:清華大学傘下の集団という意味)は、同グループが掲げる「ローカルに成長しグローバルに発展する戦略」を強化するため、元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏を同集団の「高級副総裁」(中国語原文の表現、英語版はSenior Vice President)兼日本支社最高経営責任者(CEO)に任命したと2019年11月15日付けで発表した。
紫光集団の会長兼CEOであるZhao Weiguo氏は坂本氏の起用について「優秀な人材をリクルートすることは、紫光集団の急速で革新的な成長の鍵である。坂本氏の任命は、ローカルに成長しながらグローバルに拡大するという戦略の具現化であるだけでなく、間違いなくイノベーションの能力を高めることにもなる。地域の顧客により良いサービスを提供し、現地市場の発展に貢献するために、世界中の紫光集団子会社が現地の人材を活用するようにしていきたい」と述べている。
一方、坂本氏は「近年の紫光集団の迅速な発展と確立された業界プレゼンスは、この分野の専門家にとって大きなチャンスを約束している。 私の専門知識を活用して、紫光集団の成長戦略の実行、ビジネスの日本市場への拡大、グローバル展開の促進に役立ちたい」と抱負を述べている。
紫光集団広報は、坂本氏の経歴を「DRAM分野で30年以上の経験があり、技術と戦略で優れたリーダーシップを持っている。Texas Instruments Japan(日本テキサス・インスツルメンツ)の副社長、神戸製鋼の半導体事業責任者、UMC Japan社長、エルピーダメモリ社長兼CEOなどを歴任した」と紹介している。
なお、同氏は2015年に半導体メモリDRAM開発会社としてサイノキングテクノロジーを立ち上げ、日台から多数の技術者をリクルートして中国合肥市でDRAMメーカー立ち上げを地元の地方自治体と画策したが失敗に終わっていた。現在、中国では量産現場の半導体技術者が極端に不足しており、本格的な生産能力拡大がなかなかできない状態にある。紫光集団は、坂本氏の人脈を活用して日本人技術者のリクルートを推進するのではないかと日中の業界関係者は見ている。