米VMware 上席副社長 レイ・オファレル氏

ヴイエムウェアは11月11日、同社が推進するクラウド ネイティブ戦略に関する記者発表会を開催した。同社は今年8月、年次イベント「VMworld 2019」で、Kubernetes上でモダンアプリケーション開発、実行、運用管理を支援するためのフレームワーク「VMware Tanzu」、vSphereをネイティブのKubernetes上に展開するプロジェクト「Project Pacific」を発表している。

米VMware 上席副社長 レイ・オファレル氏は、「VMwareは長らくインフラのベンダーとして見られてきたが、ここ2年はアプリケーションにフォーカスしてきた。Kubernetesへの取り組みは、bitnami、Heptio、Pivotal Softwareの買収によって進んできた」と語った。Pivotalの買収も「VMworld 2019」において発表された。

さらに、オファレル氏は「Pivotalを統合することで、企業文化、開発手法、ツール、プラットフォームにおいて、パワーがアップする」と語った。そして、買収したbitnami、Heptio、Pivotalの資産がVMwareの資産に統合されていく中で、中核となるのが「Project Pacific」だという。

11月5日、一部の顧客に対し、「Project Pacific」のベータ版の提供が始まった。「Project Pacific」により、Kubernetes上に仮想環境を展開できるようになり、VMwareの管理ツールでKubernetesやコンテナのインフラを展開・管理することが可能になる。

クラウド ネイティブ アプリケーション ビジネスユニット 研究開発担当 クレイグ・マクラッキー氏

「VMware Tanzu」については、米VMware クラウド ネイティブ アプリケーション ビジネスユニット 研究開発担当のクレイグ・マクラッキー氏が説明した。同氏はKubernetes OSSプロジェクトを立ち上げたHeptioの共同創業者だ。

マクラッキー氏は、「VMware Tanzu」について、「企業がKubernetesを活用していくため、生産性を向上するために必要なもの」と述べた。「VMware Tanzu」は、Kubernetes上でのアプリケーションの開発、実行、管理に関する製品とサービスのポートフォリオとなっている。

マクラッキー氏は、モダンアプリケーションを構築する上で、「企業でもサプライチェーンを構築する必要がある。そこには、bitnamiやPivotalの技術が取り込まれる」と説明した。

サプライチェーンは、「セキュアなコードのアセンブル、展開、アップデート」「クラウドネイティブなアプリとマイクロサービスの開発」「アプリとコンポーネントのパッケージングと展開」「短期間および長期間のワークロードの運用」「パイプラインの統合とデリバリーの自動化」といったフローから構成される。

「今、Springよりもすぐれた技術が必要だが、PivotalによってSpringがKubernetesに統合されていく。また、PivotalのFunction Serviceによって、企業はサーバレスのホスティングにアクセスできるようになる。さらに、PivotalのApplication Serviceによって、開発者がDevOpsの環境に関わる時間を低減して、開発に集中できるようになる」と、マクラッキー氏は話した。

  • 「VMware Tanzu」の概要

  • モダンアプリケーション開発におけるサプライチェーン

「Project Pacific」とあわせて、VMware Tanzu Mission Controlのベータ版も一部の顧客限定で提供が始まっている。同製品は、あらゆる環境に構築されたKubernetesクラスタを単一の制御コンソールから管理できるツールである。マクラッキー氏は「今、開発者とオペレーターが分断されている。彼らは同じビューを持つ必要がある。それを担うのがTanzu Mission Control」と述べた。

  • VMware Tanzu Mission Control

マクラッキー氏は、「Project Pacific」については、「2つの側面を持っている。1つは、vSphereの次期バージョンにKubernetesが組み込まれること。もう1つは、KubernetesのコンテナアプリケーションからvSphereを動かせるようになること」と説明した。さらに、「モダンなシステムにおいて、人間が介在していてはダメ。APIベースでコントロールできるインタフェースが必要になる」と話していた。

  • 「Project Pacific」

そして、企業がKubernetesを利用する際の課題である「スキル不足」を解消するための策として、「VMware Cloud Native マスター サービス コンピテンシー」が新設されたことも紹介された。これは、パートナーが、クラウドネイティブのエコシステムにある技術も利用しながら、Kubernetesベースのプラットフォームを設計し、継続的にアプリケーションを配信できるようにするプログラムだ。

  • 「VMware Cloud Native マスター サービス コンピテンシー」