仁科記念財団(小林誠理事長)はこのほど、原子物理学とその応用分野での優れた業績をたたえる2019年度仁科記念賞を、電圧を加えると超伝導になる材料を開発した東京大学の岩佐義宏教授と、ニュートリノの観測に貢献した千葉大学の吉田滋、石原安野両教授の計3氏に贈ると発表した。授賞式は12月6日東京都内で行われ、受賞者に賞状、賞牌と副賞が贈られる。

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    左から岩佐義宏教授(仁科記念財団提供)、吉田滋教授(仁科記念財団提供)、石原安野教授(仁科記念財団提供)

岩佐氏は東京大学大学院工学系研究科教授の傍ら理化学研究所創発物性科学研究センターのチームリーダーを務めている。同氏の授賞理由は「電界誘起2次元超伝導の発見」。比較的小さな電圧でも加えると、電気抵抗がなくなり電流が流れ続ける超伝導になる材料を開発した。省エネ機器の開発につながる成果などとして評価されている。

吉田氏は千葉大学大学院理学研究院教授、石原氏は同大学グローバルプロミネント研究基幹兼大学院融合理工学府教授。両氏の授賞理由は「超高エネルギー宇宙ニュートリノの発見」。両氏は、南極で実施中の国際実験に参加。氷上の観測装置で得られたデータの解析方法を考案、理論的に予測された高エネルギーのニュートリノの初検出に貢献するなどした。宇宙誕生の解明に役立つ成果として評価されている。

仁科記念賞は、原子物理学者の故仁科芳雄博士(1890~1951年)の功績を記念して1955年創設された。これまでの受賞者からは、江崎玲於奈、小柴昌俊、小林誠、益川敏英、中村修二、梶田隆章の6氏のノーベル物理学賞受賞者を輩出している。これまで191人が受賞しており、女性は石原氏が2人目。

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