新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の技術戦略研究センター(TSC)は、2019年7月から先導研究プログラムの一環として「海洋プラスチックごみ問題を解決する海洋分解性プラスチックの技術開発」プログラムを始めたと公表した。この研究開発プログラムは2019年7月から1年間、先導研究として実施し始めている。

この公表は、NEDOが2019年11月1日に2019年度 NEDO「TSC Foresight」セミナー(第2回)を東京都千代田区で開催し、資源循環(プラスチック、アルミニウム)とバイオプラスチックの2テーマについて、現在の想定できる研究開発課題と将来展望などを、この分野の専門家などが解説し、パネル討論したことが契機になった。

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    2019年度 NEDO「TSC Foresight」セミナー(第2回)で公表された「バイオプラスチック分野の技術戦略策定に向けて」の表紙 (NEDO資料から引用)

このNEDO「TSC Foresight」セミナー(第2回)の開催に先立ち、技術戦略研究センターは11月1日午前に記者会見を開催し、その中でTSCバイオエコノミーユニットは先導研究プログラムの一環として「海洋プラスチックごみ問題を解決する海洋分解性プラスチックの技術開発」プログラムを始めたと公表した。

欧州を中心に進むプラスチック戦略やバイオエコノミー戦略の一環として、海洋プラスチックごみ問題が全世界で注目され、世界トップレベルの製造技術を持つ日本の化学企業などが海洋性分解性プラスチックでの技術開発戦略を進めることが重要と政府・経済産業省が考えたことから、その施策を実行するNEDOイノベーション推進部が「海洋分解性プラスチックの技術開発」プログラムについて、まず先導研究プログラム募集の事前公告をし、さらに2019年3月1日に10数件の公募内容が公表された。その中の1つが次世代材料技術分野「海洋プラスチックごみ問題を解決する海洋分解性プラスチックの技術開発」だった。

この「海洋分解性プラスチックの技術開発」の提案公募では、今年7月に6件のテーマが採択された。採択されたテーマは産業技術総合研究所や三菱ケミカルなどの5機関が提案した「ポリアミドを基幹とする新規海洋分解性材料の開発」や東京工業大学や北海道大学(北大)などの3機関が提案した「CO2原料からの新規PHAブロック共重合体の微生物合成」などの合計6テーマである。

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    2019年度の「エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」公募採択テーマ6件のテーマ名と実施体制 (NEDO資料から引用)

この「ポリアミドを基幹とする新規海洋分解性材料の開発」の中身については、NEDO「TSC Foresight」セミナー(第2回)の中で、北大工学研究院の松本謙一郎 教授が「CO2原料からの新規PHAブロック共重合体の微生物合成」と題して研究内容を解説した。

日本の大阪市で今年6月に開催されたG20サミットの中で「大阪ブルーオーシャンビジョン」に合意した日本は、こうした研究開発プロジェクトの実施が強く求められていた。

この先導研究プログラムは、1年間の研究開発期間後に、その研究開発成果を基にNEDOの通常の研究開発プログラムに移行する見通しだ。