東芝と東芝デジタルソリューションは11月5日、ユーザーファーストで新規事業創出を目指すIoTサービスのオープンな共創を目指す「ifLinkオープンコミュニティ」をパートナー各社とともに2019年度中に設立し、2020年度より本格活動を開始する計画であることを明らかにした。

ifLinkはもともと、東芝のIoTプラットフォームとしてスマートフォン(スマホ)をゲートウェイとして活用しようという目的で開発されたものだが、東芝 執行役常務 CDOでサイバーフィジカルシステム 推進部長を務める島田太郎氏は、「IoTを活用して本当につながる世界を作ろう、ということを本気で考えた結果、こういう形にすることを決めた」と、自社や他社の製品やサービスといった垣根を越えて、ユーザーファーストとは何かを考えた結果、こうしたコミュニティを設立するに至ったと背景を説明する。

そのため、2019年度末までにifLinkオープンコミュニティの管理・運営などを担う一般社団法人を設立する予定で、設立後、東芝は1会員企業として参加する立場になり、ifLinkそのものも同コミュニティにて段階的にオープンソースとして公開し、今後のアップデートなどはそちらに任せることを予定しているという。すでに同コミュニティにはアルプスアルパイン、京セラ、クレスコ、Global Mobility Service、KDDI、ソフトバンク、ソラコム、デンソー、東京ガスの9社も参加を表明。一般社団法人立ち上げ時には100社程度の参加を目指すという。

  • ifLinkオープンコミュニティ

    東芝のほかに、ifLinkオープンコミュニティへと2019年11月5日時点で参加を表明している企業一覧。このほかにも水面下で複数の企業に参加を促しているという (出所:東芝Webサイト)

同コミュニティのコンセプトは「IoTやITのスキルを持っていないユーザーであっても、モジュールを組み合わせて、自らIoTソリューションを作り上げることができる」というもので、「自分で作れるIoT」をモットーとしている。そのため、ifLinkはシンプルな構成で、動作するためのしきい値を設定する「if」と、そのifの状態になった際に動作する「Then」の2つを組み合わせるだけで、「低コストかつなるべく早く、自分がやりたいことができるように、を狙った仕組み」が構築できるようになっている。

また、IoTやITと普段は無縁の生活を送っている人でも、自分のやりたいことを実現することができるといった理解の促進や、認知の拡大、新サービスの開発などを目的として「IF-THENカード」も開発。これはifとThenの挙動を絵としてかかれたカードで、添付のQRコードをスマホに読み込ませるだけで、その組み合わせを実行することができるようになるというもの。実証実験では、ビジネスデザイン系の学部の大学生が、エンジニアとは異なる視点でアイデアの構築に活用できるといったことなどにつながることが示されたという。

IF-THENカードの説明動画

島田氏は「エッジで完結できることが重要。低コストでできて、クラウドにつながらなくても使い勝手の良いソリューションを構築することができるようになる」と今回の仕組みを説明。コミュニティとしても、企業会員は有料での参加を予定しているが、それらを活用するユーザーは基本的に無料で利用を可能とする枠組みを考えており、企業のエンジニアたちが情報交換などを行って開発を加速させる開発コミュニティのほか、ユーザーたちがどのように活用しているのかといったユースケースやIoTソリューションのレシピ集などを紹介する共創コミュニティの2本柱を軸としていくとする。「いろいろなタイプのレシピをif-Thenでハックしてもらって、いろいろな会社のセンサなどをメーカーの垣根を越えてつなげて活用していってもらえるユーザーが増えれば、社会にとってより便利なコミュニティになっていく。そのためには東芝1社だけでやるのでは広がりは期待できない。こうしたオープンなコミュニティとすることで、業種業界を超えてやっていきたい」(島田氏)とのことで、日本のIoTのガラパゴス化を目指すのではなく、逆にコミュニティとしてさまざまなユースケースを提示して、それが世界に広まることを目指していきたいという。

  • ifLinkオープンコミュニティ

    コミュニティの最優先はユーザーファースト。企業会員はユーザーが使えるものをどう開発していくか、ユーザーはそうして開発された製品やサービスをどう組み合わせたら、どんなことができるのか、といったレシピの活用などを通じてコミュニティの活性化を図っていくことになる (出所:東芝Webサイト)

  • ifLinkオープンコミュニティ

    コミュニティ活性化に向けたスパイラル (出所:東芝Webサイト)

なお、企業会員のモデルは2019年11月5日時点では、「プレミアム」「レギュラー」「ベンチャー」「アカデミック」の4種類が提示される予定で、年会費としては数万円~数百万円(各種の参加できる範囲やifLinkのテストベッド利用数などが異なる)を予定しているという。

ifLinkコンセプトムービー