オープンハウスは11月5日、AI(人工知能)及びRPA(Robotics Process Automation)技術の研究開発を実施し、ディープラーニングや遺伝的アルゴリズムなどの高度な技術を活用することで、従来は人が手作業で行わざるを得なかった不動産の業務を自動化したと発表した。既に10テーマの実現により年間2万5700時間の工数削減に成功し、一部テーマにおいて特許出願中とのこと。

  • 宅地自動区割りシステムの画面

代表的な取り組みとして同社は、設計業務における宅地の自動区割りシステム、仲介業務における物件資料自動作成/全自動帯替え、仲介業務及び開発業務における物件資料自動取得RPAの3点を挙げる。

宅地の自動区割りシステムに関して、同社では2018年度から宅地の仕入検討時におけるプラン図の作成(宅地区割り)の設計作業について自動化の研究開発に取り組んでいるという。

この研究開発についてはバーチャレクス・グループのタイムインターメディアに委託、遺伝的アルゴリズムを2次元の図形分割問題に適用することで、複雑な建築ルールを遵守しながら最適な区割りプランを提案するシステムを同社のAIソリューションである「進化計算 DARWIN(ダーウィン)」により開発したとのこと。

区割りを実施する際の制約条件となるパラメータを入力すると、それを遵守した状態でのプラン候補を提示するという。

このアウトプットをCADファイルとしてダウンロードし人が確認することで、作業工数を8割程度削減可能になるとしている。

現在は実証研究として現場でのトライアルを開始しており、実現すれば世界初の試みといい、同技術については特許出願中という。

  • 物件資料自動作成/自動帯替えの仕組み

物件資料自動作成/全自動帯替えに関して、オープンハウスは仲介業務において従来、顧客に提示する資料について社内の膨大な数の資料を営業が人手で検索・編集・結合しており、煩雑かつ単調な業務に工数を多く割いてきたという。

これをディープラーニングによる機械学習技術の利用により、工数を大きく削減できたとのこと。

具体的には、汎用画像分類モデル(ResNet)に対して転移学習を行い不動産資料に特化した分類モデルを開発、社内のファイルサーバに保存した各種営業資料を分類して必要な資料の抜粋、編集を自動化したという。

また、媒介物件資料の帯部分を検知するモデルを物体検出モデル(Faster-RCNN)の転移学習により開発、これを物件資料に適用することで、帯の差し替え作業の完全な自動化に成功したとのこと。

この2つの機械学習技術を活用した資料の編集・加工の自動化システムにより、年間2万時間の工数削減を実現したとしている。

  • 物件資料自動取得RPAの仕組み

物件資料自動取得RPAについて、仲介業や開発業務において実際に物件現地を案内・視察する際、地図や謄本情報など、物件関連資料が必要になる機会が多く存在するという。

しかし、それらの資料の多くは社内ネットワーク内からのみアクセスできるシステム内に存在するなど、外部で取得するには不可能あるいは敷居が高いものだったとのこと。

そのため、オフィスにいる社員に電話して取得して送ってもらう必要があったが、多忙な業務の中障壁も高く、そもそも詳細な案内・調査を諦めるケースもあったとのこと。

今回、この一連の物件関連資料の社内外複数システムからの取得及びその送信を、RPA技術の利用により自動化し、外出先からもスマートフォンから最低限の必要事項を記入したメールをロボット宛てに送ることで、1~2分程度で必要資料を集めて送付するロボットを開発したという。

これにより年間1920時間の工数削減に加えて、心理的に取得をためらっていた物件紹介・開発における機会損失回避にも貢献しているとのことだ。