トラストバンクは11月1日、LGWAN(総合行政ネットワーク:Local Government Wide Area Network)を介して業務アプリケーションを共同利用できる「LGWAN-ASP」を活用した自治体専用ビジネスチャットツール「LoGo(ロゴ)チャット」の提供を開始した。
トラストバンクと言えば、ふるさと納税事業で知られているが、同社のミッションは「ICTで地域とシニアを元気にする」だ。代表取締役の須永珠代氏は「チェンジの子会社となったことで、トラストバンクの自治体事業における信頼の蓄積とチェンジの課題をITで解決する力が合わさって、相乗効果が生まれている。現在、『ふるさとチョイス』のクラウドサービスを全国の自治体に提供している。1500以上の契約自治体がふるさとチョイスに自由にアクセスできる状況にある。ふるさとチョイスとあわせて、LoGoチャットも提供していく」と語った。
「LoGoチャット」については、取締役の木澤真澄氏が説明を行った。同氏は、「行政の業務は変えられないものと変えられるものがある。福祉サービスや災害対応などは変えられないが、紙・押印による手続きや非効率なコミュニケーション手段は変えられる。われわれは、大切なアナログを残すために適切なデジタルを実現していく」と語った。
木澤氏は「LoGoチャット」の特徴として、「LGWANで使えるクラウド型のビジネスチャット」「インターネットからも使える」「自治体同士で使える」の3点を挙げた。
自治体職員が庁内・他自治体とテキストやファイル、写真などの送受信を通信の安全性の高いLGWAN上で利用できるので、機密・個人情報の取り扱いも可能だ。セキュリティ対策は、総務省のガイドライン「新たな自治体情報セキュリティ対策の抜本的強化」に基づいている。
また、LGWANに加えてインターネットでも使えるので、外出先や出張先からもチャットができるほか、自治体の許可を得た外部の民間事業者ともやり取りが行える。
「LoGoチャット」トライアル中の埼玉県深谷市の成果は?
36の自治体では、アカウント数無制限で1年間の無料トライアルが始まっており、説明会には、埼玉県深谷市 企画財政部ICT推進室の齋藤理栄氏が登壇し、同氏における利用状況を紹介した。深谷市では、正規職員と臨時職員を合わせた約1100ユーザーが利用しており、ICT推進室でテスト運用を行った後、全ユーザーで運用が開始された。
齋藤氏によると、深谷市ではRPAも導入しており、チャットとRPAによる業務改善の効果と投資対効果を比較してみたという。総務省の資料によると、RPAの導入効果として、「茨城県つくば市が年間約21,985時間削減見込み」「熊本県宇城市年間約1700時間削減見込み」「長野県長岡市 年間2028時間削減見込みといった例がまとめられている。対するチャットの場合、職員1100人が1人当たり1日15分の業務時間が減った場合、年間6万6000時間の削減が見込まれるという。同氏は「RPAもチャットも業務改善の効果が見られるので、両方を活用していく」と語っていた。
加えて、齋藤氏はRPAとチャットの投資対効果の比較もしてみせた。RPAの場合、同氏の導入のための予算は年間300万円で、年間2000時間の労働時間を削減できたとすると、2000時間×職員1時間当たりの人件費4000円の合計の800万円のコストを削減できることになる。一方、チャットについては、導入費用は年間約508万円だが、削減費用は年間6万6000時間×4000円の合計の2億6400万円を削減できることになる。
齋藤氏は「1ユーザーの料金が月額350円は高いと思ったけど、年間に削減できるコストを試算してみて驚いた。これが実現できたらうれしい」と話した。
さらに、齋藤氏は「チャットは導入したらすぐに効果を得ることができるが、RPAの場合、勉強が必要など、効果を得るまでに少し時間がかかる」と指摘した。深谷市では、業務改善、投資対効果、即効性の3点において、RPAよりもチャットのほうがメリットが大きいようだ。
なお、齋藤氏は「LoGoチャット」を導入してからの変化について、「離れた場所から同僚のフォローが受けられるなど、コミュニケーションが円滑になったことで、意思決定が速くなった。LoGoチャットを使う人が増えれば増えるほど、効果は大きくなるだろう」と述べた。
今後は、災害時の活用の可能性が大きいとして、スマートフォンアプリのリリースに期待しているという。今年は台風が続いており、深谷市でも避難所を開設したが、現場では連絡が取りづらいなどの課題があり、「LoGoチャットで情報を共有していきたい」と、齋藤氏は語っていた。