2019年10月31日にSamsung Electronicsが第3四半期(7~9月期)の決算概要を発表した。

それによると全体の売上高は62兆ウォン、営業利益は7.78兆ウォン、営業利益率は12.5%であり、半導体メモリ部門の低迷による減益を、スマートフォン(スマホ)の販売増と、それと併せたスマホ向け有機EL(OLED)の販売増が補う形で営業利益は前年同期比では大きく下がりつつ前四半期比では2四半期連続で増加傾向となっている。

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    上段が各事業分野の売上高(単位:兆ウォン)、下段が各事業分野の営業利益(単位:兆ウォン)。CEがコンシューマエレクトロニクス事業、IMがITおよびモバイル事業、Semiconが半導体事業、DPがディスプレイ事業の略 (出所:Samsung Electronics, 2019年10月31日)

半導体不況は底を打ったのか?

Samsungの半導体事業の業績を見てみよう。売上高は2018年下期以降のメモリ価格の下落の影響に加え、スマホ向けアプリケーションプロセッサの価格低下などもあり、メモリバブル最盛期であった2018年第3四半期比29%減の17.59兆ウォンとなった。しかし、前四半期比で見ると9%増となっており、2四半期連続の増加傾向となっている。また営業利益も、前年同期比78%減の3.05兆ウォンとなったが、前四半期比では10%減に留まった。

中でもNANDの需要は、次世代スマホにおけるメモリの高容量化の継続的なトレンド、ならびにPCでのSSD採用数の増加、サーバ顧客向けの高密度ストレージニーズの拡大などにより、予想を上回る伸びとなったと同社ではしており、第4四半期も大容量化に対するニーズが堅調で、すべてのアプリケーションで価格が回復すると予想している。同社ではSSDについて、プレミアム市場での競争力強化に注力し、2019年中に第6世代V-NANDに移行することで、技術的リーダーシップと収益性を高めることを目指すとしている。

一方のDRAMについても、季節的な要因に加えて、関税問題や半導体材料の輸出規制などのマクロ経済要因に対応する顧客の在庫補充により、すべてのアプリケーションで需要が増加しているという。サーバDRAMは大容量製品を中心に需要が増加したほか、PCについてもWindows 7のサポート終了を目前に控えた企業のリプレース需要が後押ししたという。モバイル分野も、8GBを超えるストレージを搭載したスマホの需要が増加したとする。

また、第4四半期の見通しについては、最近の顧客の在庫補充による影響はあるかもしれないとしつつも、全体的な需要は堅調に推移し、前四半期比で増加する可能性があるとしている。データセンターからの高密度製品に対する堅実な需要に加え、PCも第3四半期とほぼ同程度の需要があると見られとしている。モバイルについても、5Gスマホの発売による大容量品への継続的なニーズが、需要を堅調に保つ後押しになるとの予想を示している。同社では、サーバ向け大容量製品の販売を拡大しつつ、モバイルLPDDR5の初期需要に積極的に対応することにより、技術的リーダーシップの強化を図っていくとしている。

さらに同社は2020年の半導体市場動向について、需要は回復しつつあるものの、グローバルのさまざまな動きが不確定すぎることもありメモリ市場の動向も不確実な読みしかできないとしている。ただし、データセンター関連の顧客からの需要見通しは前向きな兆候があるほか、5Gスマホの拡大がメモリの高密度化・高容量化のけん引役になることが予想されることから、DRAMの在庫は2020年の前半には正常化するものとの見通しを示しており、その後、成長に転じることを期待している。ただし、あくまで期待であり、2020年の需要については慎重に検討する必要があるため、市場の状況に合わせた柔軟な当市と生産能力の運用に重点を置いていくとしている。

5Gに期待をかけるシステムLSI事業

同社のシステムLSI事業の2019年第3四半期業績は、スマホ向け高解像度イメージセンサやアプリケーションプロセッサ、DDI(ディスプレイ・ドライバIC)の需要増により、売り上げが改善したという。

また第4四半期は、64Mや108Mピクセルといった高解像度イメージセンサの需要は増加するものの、アプリケーションプロセッサやDDIの需要が低迷するとの見通しのため、収益については前四半期で横ばいとの予想している。ただし2020年には、EUVを活用した5/7nmプロセスによる5G向けLSIなどの差別化製品が登場することもあり、高解像度なイメージセンサのラインアップ拡充と併せて、売り上げの拡大を目指すとしている。

3nm GAAプロセス開発を急ぐファウンドリ事業

TSMCと熾烈な先端プロセス開発競争を繰り広げるファウンドリ事業の業績は、EUVを採用した7nmプロセスアプリケーションプロセッサの需要増により、前四半期比で増加となったという。すでに同社はEUV 5nmプロセスのテープアウトも完了しており、コンシューマ向け製品の受注も獲得したとしている。

第4四半期は、将来の成長に備えた4nmプロセスの設計インフラの立ち上げなどを行っていくほか、EUV 7nm製品の大量生産により、利益を生み出せるものと同社では期待を述べている。また2020年には、成長が期待される5G市場を背景に、アプリケーションプロセッサおよび高解像度イメージセンサの需要が増加すると予想しているほか、5Gに加え、AI、車載、IoT、パワーおよび指紋認識といったアプリケーション分野での受注拡大を図っていくことで、顧客の多様化を図り、事業の安定化を推進する一方で、3nm GAAプロセスの早期開発完了を目指し、技術的優位性の確保も目指すとしている。