NECは11月1日、北原病院グループ(KNI)の協力のもと、患者の入院長期化の回避による早期の社会復帰とリハビリテーションのスタッフの業務負荷軽減・医療サービスの質向上に向け、AI技術を活用したリハビリ計画作成の技術実証を北原リハビリテーション病院で実施したと発表した。これにより、経験の浅いリハビリスタッフによるリハビリ計画作成業務の質を経験年数5年以上でスキルの高いスタッフと同程度まで向上するとともに、リハビリ計画作成に要していた業務時間を全体で約60%短縮することに成功したという。
リハビリ計画作成業務は「患者の回復度の予測」「リハビリ目標の設定」「リハビリ介入プログラム作成」の3つのプロセスがあり、今回の技術実証ではベテランスタッフと経験の浅いスタッフにおいて、リハビリ作成時間の開きや作成した計画書の質への影響が大きい患者の回復度の予測とリハビリ目標の設定の2つのプロセスに着目し、KNIのベテランスタッフのドメインナレッジを組み込んだ同社独自のAI技術を活用している。
同社独自のAI技術の適用により、入院3日目ごろまでの電子カルテデータから、退院までにどの程度まで回復するかをKNIのベテランスタッフと同程度の精度で予測できたという。これにより、経験の浅いスタッフでもベテランと同程度の精度での回復度予測が可能となり、患者1人あたり通常約10分かかっていた回復度予測時間の短縮を可能としている。
また、北原リハビリテーション病院に蓄積されているリハビリ目標の事例データベースにAI技術を適用することで、入院3日目ごろまでの電子カルテデータから、患者の状態に合わせたリハビリの長期および短期目標の候補の表示を行った。リハビリスタッフは、AI技術が表示したリハビリ目標の候補を参考に目標を設定できるため、従来は患者1人当たり約30分かかっていたリハビリ目標設定が、経験の浅いスタッフだけでもベテランスタッフと同程度の質のリハビリ目標設定を約10分で作成できるようになったという。
今回の技術実証により、経験の浅いスタッフが作成したリハビリ計画をベテランスタッフが見直す従来の運用では患者1人当たり約50分要していたリハビリ計画作成業務を約20分で行うことができ、業務時間を約60%短縮できることを確認した。
短い期間で最大限に回復を促すためのリハビリサービスの提供を効率化することが可能となり、限られた財源と人材で、高齢化によるリハビリニーズの増加に持続的に対応することが期待できるとしている。