日本マイクロソフトは10月31日、7月22日から9月6日にかけて実施した働き方改革(ワークスタイル イノベーション)の自社実践プロジェクト「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」の効果測定結果を公開した。

同プロジェクトは「週勤4日&週休3日」トライアルを軸としたもので、今年8月、同社はすべての金曜日を休業日とし、正社員は特別有給休暇を取得し、全オフィスをクローズした。

あわせて、「For Work : 自己成長と学び」「For Life : 私生活やファミリーケア」「For Society : 社会参加や地域貢献」という3つの視点から、自己啓発関連費用や家族旅行費用、社会貢献活動費用等の補助などの支援プログラムを実施した。

  • 「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」の概要

  • 「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」支援プログラム

日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員 手島主税氏

執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員の手島主税氏は、同プログラムを実施した背景について、次のように説明した。

「過去10年間の取り組みで、業務の電子化、労働時間の削減、いつでもどこででも働ける環境の整備は実現したが、各国のマイクロソフトと比べると、非効率な業務があることや会議が長時間であることが明らかになり、まだまだやるべきことがあるとわかった。また、業務と人財の連携の可視化もできていなかった。『ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏』では、AIやクラウドといった新たな技術によって、こうした課題の解決に取り組むことにした」

世界のマイクロソフトと比べると、日本マイクロソフトは、メールにかける時間が24%、出す人が31%多く、会議にかける時間が17%、参加者が11%多かったという。

そこで、会議については「基本30分で」「人数は多く5人まで」「コラボレーションはMicrosoft Teamsを活用して」という方針を定め、効率化に取り組んだ。

手島氏は、「労働日を1日減らすのは大きな決断だったが、一番重要なのは社員の満足度。今回のプロジェクトで課題も見えてきたとともに、次の一手に向けたデータを得ることができ、経営として正しい判断だった」と語っていた。

日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター エグゼクティブアドバイザー 小柳津篤氏

Microsoft Teamsは同社が提供しているコラボレーション・ツールで、ワークライフチョイス チャレンジ期間中は、チャット、ミーティング、Officeアプリとの連携、業務プロセスのワークフローなどにおいて活用することが推奨された。

また、働き方の可視化と分析は、同社の組織の活動状況から生産性を分析するサービス「Workplace Analytics」によって行われた。

効果測定結果については、マイクロソフトテクノロジーセンター エグゼクティブアドバイザーの小柳津篤氏から説明がなされた。同氏は、削減や最小化を目標とする指標群%削減)、活性化や増加を目標とする指標群%向上)、社員の気持ちや印象を確認する指標群%満足)という3つの観点から、効果測定を行ったと述べた。

「削減」に関しては、前年同月と比べ、「就業日数:25.4%減」「印刷枚数:58.7%減」「電力消費量:23.1%減」という成果が確認された。

「向上」に関しては、「8月の労働生産性(売上/社員数):前年同月比39.9%増」「30分会議 実施率:前年同月比46%」「リモート会議 実施率:21%増(2019年4月~6月との比較)」「1日当たりのネットワーク数(人財交流):前年同月比10%増」という成果が確認された。

「満足」に関しては、「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏の施策全体を評価するという回答が94%」「週勤4日週休3日制度を評価するという回答が92.1%」という評価を得ているという。

小柳津氏は、アンケートの結果から「For work」「For Life」に関しては社員の意識変革が見られたが、「For Society」に関しては「踏み込みが甘かった」と語った。

  • 「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」効果測定の指標と結果

ただし、小柳津氏は「いい話ばかりではない」と、社内アンケートのフリーコメント(856件)のうち、取り組みに対する「不満/苦情」が10.6%見られたことを明らかにした。この結果について、同氏は「アンケートでは10%と出ているが、全社員が何らかの辛さを感じていたと受け止めている」と述べた。

そして、小柳津氏は「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」から見えた課題として、「有効活用できた社員/部署とうまくいかなかった社員/部署のギャップ」と「『お客さまの迷惑にならないかどうか』とのせめぎあい」を挙げた。

前者については、営業職など顧客と接触することが、自身の業績につながる職種の人は休業日によって労働時間が減ることについてと抵抗感を感じた人もいたそうだ。後者については、「お客さまが休んでいないのに、自分が休んでいいのか」と悩んだ人もいたという。

  • 「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」から見えてきたことと課題

こうした「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」の学びを踏まえ、今後「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 冬」が展開される。手島氏は、「多様な働き方への"主体的・自律的"チャレンジ」「チャレンジの"輪"を広げる」という2つの柱をもとに、夏の学びのレベルを上げていくと語っていた。

  • 「多様な働き方への"主体的・自律的"チャレンジ」の具体策

  • 「チャレンジの"輪"を広げる」の具体策