南米原産で強い毒を持つヒアリの女王アリが、9月から10月にかけて東京都江東区の青海ふ頭で多数確認された。この事態を重くみた政府は21日、ヒアリ対策関係閣僚会議を開催、ヒアリの定着阻止に向けた緊急対策を決めた。
対策会議では、青海ふ頭で繁殖可能な女王アリが飛び立って他の場所に広がった可能性があることが報告された。緊急対策として、ふ頭内全域への殺虫餌の設置や周辺調査エリアの拡大などを決めた。ヒアリが国内に定着した場合、人への健康被害だけでなく、広範な社会的、経済的被害が発生する恐れがある。
環境省などが作成した会議資料によると、青海ふ頭で9月から10月にかけて1000匹以上のヒアリが見つかり、この中には50匹を超える女王アリが含まれていた。女王アリは繁殖期に羽アリの姿で空を飛び、交尾を終えると地中に巣を作るとされている。
海外の事例から、繁殖能力を持った女王アリが広範囲に広がり繁殖すると、根絶が困難になると懸念されている。そのため、政府は定着阻止に向けて対策を強化する。緊急対応の具体策としては、青海ふ頭全域への長期的な殺虫餌設置による面的な防除とその効果確認調査、民有地などを加えた調査エリアの拡大、これまでの港湾管理者や事業者を対象としたヒアリ対策講習会をより柔軟な開催方針に見直すことなどが挙げられている。
ヒアリは物流によって世界に急速に広がっており、アメリカ、中国、台湾、オーストラリアなどではすでに定着が確認されている。
環境省によると、国内では2017年6月に兵庫県ではじめて発見されて以降、10月現在までに14都道府県で40事例以上見つかっている。事例の多くはコンテナ内や、コンテナが水揚げされるコンテナヤード周辺での発見によるもの。これまでも国内では港湾地域を中心に調査・防除による水際対策がとられていた。
ヒアリは日本の「特定外来生物」、国際自然保護連合(IUCN)の「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されている。国内に定着すると経済的損失もきわめて大きく、対策関係閣僚会議の資料によると、アメリカでのヒアリ被害および対策費の総額が年間1兆円を超えているとしている。
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