課題は、相手によって違う資料送付方法にかかる手間やコスト
2002年設立のLIXIL住宅研究所は、住宅の水回り設備や建材を取り扱うLIXILグループに属する、住宅フランチャイズチェーンの運営などを主業務とする企業だ。
各地の地場ビルダー単独では困難な商品開発や、部材の直接一括購入などを受け持ち、広告宣伝活動を本部が担当することで、住宅メーカー並みの強さを持つ地場ビルダーを実現することを役割としている。そのため、実際に住宅の建築を行うのは子会社や地場ビルダーだが、建築にあたっての資材発注や人材の手配を現場担当者が一手に引き受けているという。
「発注業務は物と人の両方を扱うのですが、依頼にあたって必要となる発注書や資料についての扱いは一定ではありません。発注先によって送付方法がメールやFAX、郵便など異なっていますし、中には手渡しが必要なこともあります。そのため、発注の準備として、要求に合わせてコピーを取るなどの事前準備に多くの時間がかかっていました」と話すのは、LIXIL住宅研究所 商品本部 商品部 技術開発G 係長の市川隆雄氏だ。
「コピーを取る」「FAXを送る」「電話をする」という作業は手間がかかるだけでなく、コストも発生する。郵送となれば、当然送料がかかる。何より、それに対応しなければならない人手も大きなコストだ。
「職人の行き先を指示する、変更点を知らせるといった作業も大量に発生します。これを1人が担当するとなると、ミスも発生しがちです」と市川氏。こうした状況を解消するため、2015年頃からさまざまな製品の検討を重ねていたという。
建築業界の細かなニーズにマッチした「ダンドリワーク」
いくつかの製品を試用しながら、現場として必要な機能の不足や使いづらさを感じて本採用に踏み切れずにいた中、2017年初頭に出会ったのが「ダンドリワーク」だった。
「建築では図面や写真を大量に扱うため、大容量の保存容量が必要なのですが、なかなか要求を満たしてくれるものと出会えませんでした。その点、ダンドリワークは保存容量も大きく、大量の写真も扱うことができます。また、建築の業務を十分理解している建築業界側からのアプローチで作られたツールであるため、ITの専門家が作ったものとは違うと感じました」と市川氏。
ダンドリワークは、自身も建築・リフォーム業界で活躍しているダンドリワークスが、ITリテラシーの高くない職人でも無理なく利用できるコミュニケーションツールを目指して開発されたものだ。それだけに、現場の実質的な動きを十分踏まえたものになっている。
例えば、建築現場では近隣の駐車場を使えるかどうかといった細かな情報を、多くの人で共有する必要がある。しかも、各工程を専門とする業者が30社以上関わることが少なくない。さらに、各業者は複数の現場を掛け持ちしているため、情報は錯綜する。結果として、伝言ではミスが出やすく、メールなどの個別連絡も漏れや勘違いが発生しやすくなる。
こうした状況の解消を、「きちんとメールを送信する」「確認を促す」といった形ではなく、共有する掲示板を見ればすぐにわかるといった状況を作ることで実現しているのがダンドリワークの特徴だ。
「『図面に変更があったけれど、伝達がうまく行かずに古い図面のまま施工してしまった』といった話もありました。そんな時は当然、作り直しになるわけですが、一生懸命作ったものを自分で壊して作り直すことは、費用はもとより精神的にも応えます。ダンドリワークで最新の図面だけを共有するようにしたことで、伝達ミスなどが減りました」と市川氏は語る。